紅色に染まる吹屋の町並み
ベンガラで栄えた町 備中吹屋を訪ねて

高梁市成羽町には、屋根も瓦も壁もベンガラの紅色に染まる美しい町並みが保存されている。ここは吹屋ふるさと村として国の重要伝統的建造物保存地区にも選定されている。



ベンガラは漆器や陶磁器、建築用、製瓦用、染織用など多くの染色用や腐食防止として使われてきた顔料だ。
吉備高原のこの辺りには銅鉱山があり、江戸時代から明治時代にかけて鉱山の町として繁栄した。と同時に、その副産物、硫化鉄鉱を原料としたベンガラを生産する町としても全国に知られていた。


当時、この吹屋の街道は、銅を始め砂鉄や穀物などを運ぶ荷車が行き交い賑わっていた。町には商家がたくさん建ち並び大いに繁栄していたようだ。
ここ吹屋ふるさと村は、往時の面影が残る町として保存されている。
街道に沿ってベンガラ格子の家並が300mも軒を連ね、ベンガラの紅色一色に染まる歴史的な佇まいだ。
この美しい街並みはベンガラで財を成した人達が計画的な街づくりを行った結果だと言われている。

初めてこの村に足を踏み入れると、この紅色に染まる光景に驚かない人はいないだろう。石州瓦も紅く街並みを埋め尽くしている。
町には土産物としての特産品のベンガラを使った紙や布製品を売る店の他に、醤油などの店もある。
この


村のはずれにあるベンガラ館には、ベンガラのできるまでの工程を当時のまま保存してある。
やはりここも、建物から作業場全てがベンガラの紅色一色に染まっていた。


















製造工程はこのように。
@硫化鉄鉱を焼き、硫黄分がなくなった焼鉱を溶解槽に入れ、ローハ分を溶解させ不純物を取り除いたのがローハ(淡い緑色の結晶)である。これを吹屋に送る。
A吹屋では、そのローハを原料に釜場室で700度で焼き赤褐色の焼キを作る。
B次に水洗碾臼室で水を加え水車を動力とした石臼でひき細かくする。
C脱酸水槽室に送り、何度も水を入れ替えて酸を抜く。
D酸の抜けたものを干板にうすくのばし天日乾燥する。これがベンガラだ。

現在では工業化され、純度の高いものを早く、安く作る事ができるようになった。
それでも、吹屋の伝統技術によって作られた物の色合いにはどうしても勝てないようだ。










このベンガラ館では、袋詰めしたベンガラを販売している。1袋800円。




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吹屋ふるさと村へは、倉敷から国道180号線を北上し、高梁市に入り国道313号線へ左折する。
高梁川を渡りしばらく行った所で、今度は北への狭い道を入る。
ここからの道が難しい。何度も同じ道を通り、完全に迷ってしまった。

帰りは遠回りと思いつつ少し北側の県道85号線を通ると、簡単に国道180号線に出られた。
この道の他にかぐら街道と言う道もあった。そして国道側の入口にはちゃんと案内板が出ていた。


    
 吹屋の中町、旧街道



 吹屋の中町、中央通りの家並み




    吹屋を伝える新聞記事




※ベンガラは酸化第二鉄を主成分とする赤色の無機顔料。
銅山の捨石である磁硫鉄鉱から偶然発見されたらしい。