伝統的製法のしょうゆと金山寺みそ
醤油のふるさと湯浅を訪ねて
鎌倉時代、紀州由良町にある興国寺の「法燈円明国師」は、修行先の中国から味噌の醸造法を学び帰国した。野菜を味噌に漬け込み保存すると、水分が出てくる。それをなめてみると、なかなか美味しい。それが醤油の始まりだ。
千葉県に醤油メーカーが多いのは、紀州の漁師が銚子沖まで北上し漁をしていて伝わったのではないかと言われている。



湯浅観光案内図
湯浅は古代より熊野詣の宿場で、平安時代には勢力を誇った土豪、湯浅氏の本拠地として栄えた。
醤油醸造などで発展した町並は、歴史的景観をよく今に伝えていると評価され、国の重要建物群保存地区にも指定されている。

この中で、天保12年(1841年)創業の”角長”は、今も手づくり醤油の製法を伝える唯一の醤油屋だ。
醤油や原料の積み下ろしに使われた、大仙堀に沿って黒に白壁の醸造蔵が並んでいる。
この蔵の天井や壁には、長い年代の酵母が張り付いている。この「蔵つき酵母」が醤油の味に深みとコクを与えてくれるそうだ。










また、店の前にある職人蔵には、創業からの台帳や醸造用具が展示されている。薄暗い蔵の中には管理人がいるわけでもなく、そのまま開放されていた。

店に入ると棚に少しづつ商品が並べられていて、すぐ案内に来てくれた。とても穏やかな口調で歴史から商品の事まで話してくれた。右側の事務所も古風な感じがする。前回はとっくりに入った醤油を2本買ったが、今回はもろみを買った。これは、もろみステーキに使って食べたいと思っている。

角長のすぐ隣が金山寺みその”太田久助吟製”の店だ。店内には大きなタライのような器に金山寺みそが盛られていた。量り売りで、パックに詰めてくれるようだ。

醸造の歴史から考えれば、みそや金山寺みそから醤油ができたようなものだから、湯浅には元祖の金山寺みそ屋も多い。

湯浅の金山寺みそはとても美味しい。今回はこの金山寺みその醸造店をたくさん回ってみようと考えていた。
湯浅町の観光マップや資料は駅には置いていなくて、この太田久助吟製店のすぐ前にある”北町ふれあいギャラリー”に用意されている。ここは休憩所にもなっていて、もう何人かが座ってお話中だ。

ギャラリーでもらった湯浅町マップには金山寺みその店は7店載っていた。
歴史的に古いのは玉井醤本舗らしいが、少し辛口だとか、あの店は甘口だとか、地元ではそれなりに評価があるようだ。私は他に合成保存料とかにも関心があった。

観光マップを持って早速散策に出かけた。この保存地区辺りは道が東西と南北で交わっていて分かりやすい。角長のあるのは北町通り。この通りは特に歴史的建造物が多いようだ。すぐ東側にはそのような麹資料館がある。
この角から南側が鍛治町通り、歴史的な趣のある町屋が軒を連ねている。雨粒を防ぐ幕板が下がったていたり、二階部分に虫籠窓と呼ばれる格子を漆喰で塗り籠めた窓があったりする。

玉井醤大阪屋三右衛門金山寺味噌店ここから西側の中町通りへ向かう。”玉井醤大三みそ”と”あみ清みそ”がある。中町郵便局の前を通りかかったところで急に大粒の雨が降ってきた。慌てて横にある福蔵寺へ入って雨宿りをする。

玉井醤は老舗のたたずまいだ。”玉井醤大阪屋三右衛門、元祖古伝造り経山寺味噌”と看板に書かれていた。贈答品に使われるのも多いようで、玄関には発送間近の荷物が積み上げられていた。
経山寺味噌とは今の金山寺みその事。

ここからちょっと行った交差点を右折するとすぐ”あみ清みそ”があった。中でいろいろ話を聞いた。金山寺みその他に紀州南紅梅と書かれた梅干もたくさんあった。
その角を右折すると”味の屋醸造丸新”がある。この店は保存料を使っていなかった。試食もさせてもらい、早速一個を送ってもらう事にした。
国道の方には、小原久吉商店みそ、垣内みそ店などがあったが、地図上で、大宮通りの小原久吉となっている場所は空き家になっているようで、よく分からなかった。
JR湯浅駅近くの”丸新”へ入って話を聞いていると、この店は先ほど発送を頼んだ店の長男がやっているとの事だ。実家の方は両親と次男がやているとか。ここでおみやげ用のものを買った。


金山寺みその入った袋を提げて、路地歩きもした。
歴史のある町だから散策はとても楽しい。ここはそう広くもなく、特に建造物群保存地区辺りだけだと、縦横に歩いても数時間かからない程だ。
平安時代の石垣積みの中波止と言う場所があり、ここではのんびり海を見ながら過ごす事ができる。



興国寺は味噌・醤油の発祥で知られ、尺八・虚無僧の本山。

興国寺本堂。鎌倉3代将軍の源実朝の菩提寺でもある。



湯浅で伝統的製法の醤油醸造を続けている”角長”は天保12年創業の老舗だ。

キッコーマンの工場見学に行った時、直営レストランで、もろみステーキを食べた。もろみの香りと醤油味がとても美味しく今も記憶に残っている。

湯浅の金山寺みそ。うり・なす・生姜などが入って大変美味しい。地元のスーパーではとても手に入らない。


御坊市を走る紀州鉄道。御坊駅と西御坊駅の間2.7kmを走るミニ鉄道だ。
西御坊の駅舎は小さくて、この気動車がずいぶん大きく見えた。



和歌山までやってくると、やはり和歌山ラーメンだ。井出商店にはこのような行列ができていた。こってりとした豚骨醤油スープが美味しい。
早寿司がテーブルに置かれていた。

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