蘇州・無錫・紹興・上海を巡る旅  
紹興で臭豆腐と黄酒を楽しむ
第6日目  7月26日

1. 蘇州から紹興へ

目的地が紹興なので、少し早く出た。娘と孫娘の3人での小旅行だ。蘇州駅から上海虹橋駅までは高速列車G7129次、9点34分発で行く。GとかDは、ほんの30分程で着いてしまうが、これが快速Kだと1時間半はかかる。そして10時頃に上海に着いた。
虹橋駅は実にきれいだ、しかもとても機能的にできている。広くて長い3本の通路があって、その中央通路にはファストフード店、ドラッグストア、コンビニ、軽食・レストラン等が整然と配置されている。中程には地下鉄駅があり、奥には南へ北へと出発する高速列車の駅がある。反対側は国内線の空港に繋がっている。また国際線ターミナルも近いし、長距離バスターミナルもこのエリア内にあるのだ。

ブランチしようと肯徳基に入った。早々と休憩タイムだ。
中国での人気朝食メニューには、豆乳スープ、油条(揚げパン)、お粥、それに豆腐花とかって読んでいたのだが、どうも今まで食べ慣れたものばかり注文してしまっている。
この日もちょっとピリ辛のバーガーだ。
そして私の旅のパターンがここでも行われてしまっていた。朝は遅く出かけ、ファストフード店でゆっくり休憩して、お昼頃やっと目的地へ向かう。まるで韓国の一人旅と同じだ。ただこの日は、朝ちょっとばかり早かったが。

虹橋発はD5589次の11点32分。鉄道駅の待合室へ行った。待っている間にチベットの水を貰いに行く。前に『5100 取水地 鉱泉水』、と書いてある。チベット高原の標高5100mで取水したものなのだろうか。何かとても貴重な物に感じられる。それにこのサイズが持ち歩くにはちょうどいい、350mlだ。切符にチェックを入れて渡してくれた。
出発の案内が表示され、紹興行きの改札が始まった。この巨大な駅、プラットホームが遠くの方まで何本も並んでいる。
郊外に出ると列車はずっと田園地帯を走る。途中の杭州南駅では多くの客が降りて行った。車窓の景色を楽しみながら、紹興までは時間が経つのを感じなかった。


2. 魯迅故里を散策し、黄酒(紹興酒)と臭豆腐を楽しむ

13時29分、紹興駅に着いた。高速鉄道用のプラットホームが少し嵩上げされて高くなっている。幅は狭く乗り降りだけに使うようで、ここを歩いて移動する人はいない。すぐ在来鉄道線の方へ階段を下りる。今まで行った駅の雰囲気とちょっと違う。人口550万人もの大都市なのに素朴な感じがする。
駅を出ると、広場の右側にバスターミナルが有った。そこには人っ気が無い中、3台のバスが停車していた。どれも動く気配はない。すぐ前の通りも交通量は多くなさそうだ。落ち着いた静かな町の雰囲気が漂っている。
魯迅故里方面へのバスをさがした。すると4路バスの路線図に魯迅路入口とあった。火車站から4番目の停留所になっている。3台のバスは違っていたが、すぐに4路バスがやってきた。
『魯迅路入口』で降りると、左側へ斜めに入る路地が見えた。入り口にはりっぱな門がある。ここだ、頭にある地図と合致した。
歩いてすぐの所に、何度もTVで見た『咸亨酒店』があり、店先には魯迅の小説に登場する主人公、孔乙己の像が立っている。何とも存在感のある居酒屋だ。そしてこの辺りは、タクシーや自転車タクシーの溜まり場になっているようで、多くの運転手が客をさがしていた。少し行くと関所のようなちょっとした垣があり、その先の魯迅中路には、ずらりと土産物店や駄菓子屋、飲食店等が並んでいた。

紹興と言えば紹興酒、黄酒(Huangjiu )が有名だ。と言うか、それが目的で来た訳でもあるのだが。そして、もう1つは臭豆腐。ここ紹興は臭豆腐(Choudoufu )の発祥の地でもあるらしい。豆腐の発祥地と言われているのは、安徽省淮南らしいので、紹興からはそう遠くない距離だ、中国的には。
多くの観光客がそぞろ歩くこの通りで、臭豆腐の黄色い旗を見つけた。TVで見たこの店、『周家食品』、カウンターに立つ人も見覚えがあった。ここだったのか。すぐこの店に入った。メニューはもう決まっている。TVを見ながら決めていた。黄酒に臭豆腐に煮豆だ。
カウンターの上に掛っているメニュー表を見ると、名物の臭豆腐は5元/皿、紹興酒黄酒3元/碗、他には太雕酒8元、花雕酒10元だ。
紹興特産の茴香豆など3種類の煮豆は3元となっていた。

臭豆腐は、志村と優香が台湾旅をする番組で、ドリアンより臭いと言っていた。若しそうなら黄酒で流し込めばいいか、とか。私は酒が弱い方なので、黄酒も酔いそうならちょっと飲めばいいか、とか考えていた。
ところがである、この臭豆腐、甘辛2種類のタレを付けて食べてみたのだが、臭みなど殆ど無い。とても美味しいのだ。本格的な味にすれば観光客受けしないだろう。私のように初めての者にはありがたい。それに黄酒も酔った感じがしない。何とも美味しい紹興の味を体験できた。

ほろ酔い気分で、魯迅ゆかりの建物にも入った。書道に関する店、書籍・文具とか、この通り独特の雰囲気のする店も少なくなかった。

そして大通りに出る所まで来ると、広場になっており案内所があった。実はこの案内所、ここで魯迅ゆかりの記念館などの入場整理券を配っていたのだ。私達は逆向きに入って来たから分からなかった。それでも十分に魯迅通りを楽しむ事ができた。

その案内所の建物の中に、紹興酒をいっぱい集めた販売所があった。棚にはずらりとビンが並んでいる。その中で、壺に入ったそれらしき雰囲気のするのを見つけた。尋ねると12年物だと言う。お土産はこれに決定した。壺の周りに粘土が塗られていて、その外側は竹で編んだ物で覆われている。この壺を保管しているのは何度かTVでも見た。

いい買い物をした後、広場の前の店にも入ってみた。この店も紹興酒があちこちにたくさん並んでMOUSE いた。そして、右側のコーナーで、何と15年物の試飲をさせてくれると言うのだ。大きな壺に真上から柄杓を入れ汲み取る。娘が写真を撮りたいので、もう一度やって欲しいと頼んでいた。
その15年物、味は先ほど臭豆腐の店で飲んだのとは全くの別物だった。とろっとして、甘みと香りが口の中にじわっと広がる。何とも言いようのないほどうまい。

以前に、紹興酒はザラメの砂糖を盃に入れておいて飲むとか教えられた。そしてそういう風に飲んでいた。でもあれは、安い酒を古酒の味わいにするやり方だと思う。15年物に砂糖など要らない。

紹興酒をすっかり堪能して、今度は近くの水路沿いの道を歩いた。紹興は水郷地帯としても有名だ。至る所に水路がある。この魯迅故里辺りにもきれいな水郷風景が広がっている。多くの観光客が水辺で遊んでいた。水路沿いの館の一部は店舗としても活用されているようだ。

帰り道は元来た路を戻ったが、『三奇臭豆腐』と言う店の前にさしかかり、臭豆腐の旗を見てテイクアウトでまた買ってしまった。これも美味しい。臭豆腐もすっかり堪能した。
途中から、右側の古い路地を歩いてみた。路面が汚れていた。魚屋や八百屋があり市場のような通りだ。
再びバス通りへ出て4路バスを待つ。前の大通りを自転車タクシーが客を乗せて次々と通り過ぎて行く。


3. タイムリーな切符が取れず紹興駅前をぶらつく

列車の予約する事の重要性を思い知らされた。「待たずに乗れる新幹線」とか、日本の電車に乗る感覚を入れ替えなければいけない。售票処は必ず混んでてかなりの時間かかるし、列車もなかなか予約が取れない。一日の行動は列車の時刻中心の方が無難だ。
先日の事故の影響で、区間によっては遅れとか運転休止が出ているようだ。真っ赤な文字の電光掲示板には、緊急を示すように文字が大きくなったり小さくなったり目まぐるしく動く。
実は、私たちがいる紹興駅の先には事故が起こった温州駅がある。その線路を通ってくる列車に乗るのだ。電光掲示板の緊迫度がそれを教えてくれる。

それでもプリントアウトした時刻表を持っていたから、上の電光掲示板の残席を確認しながら、窓口へ出すメモを作る事ができた。上海虹橋行きのD3106次、20点35分発、虹橋には22点14分に着く。この列車が何とか取れた。福州南~温州南~紹興~杭州南~上海虹橋までの路線だ。

それは良かったが、まだ2時間近くもある。
取りあえず、駅前で看板が見えたカルフールへ行く事にした。たくさんのテナントが入っているように思えたからだ。ところが、この店規模が小さく休めるような店が無かった。外はまだかなり暑い。とにかく飲料とアイスでも買おう。店内はさびれていた。客は少なく商品も少ない。従業員も活気が無い。それでも、あちこちさがして、アイスとポカリ等の飲料を買った。
でも今度は座る所が無いのだ。娘がとっさに、案内所の近くにあるパイプに広告を敷いて、急場の椅子を作った。3人で座って先ずはアイスを食べた。味の種類はともかく冷たい物は美味しい。しばらく通路を行きかう人を眺めて過ごした。
夕食の話になると、娘が蘇州にある店と同じのを見かけたと言った。安くて美味しいらしいのだ。
と言う事で今度はそちらへ言移動する。駅側に面している2階にあるレストランだ。杭州料理の店、外婆家。日本のファミレスのようだ。店内はきれいで、椅子も座り心地がいい。時間はたっぷりなので、ゆっくりできそうだ。ところがちょっと注文しすぎたようで、かなりの料理がテーブルに並んだ。価格はリーズナブルだけど、コーラは缶のまま出てきた。
それでも、お喋りしながらゆっくり食事を楽しむ事ができた。

余裕を持って紹興駅へ向かった。駅の手洗いに行くと、入り口の台にお湯を入れたカップラーメンが置いたあった。近くに給湯設備が何カ所かある。中国の列車は、お茶を入れたりラーメンを作ったりするお湯を、座席まで持ってきてくれるとか聞いた。それを駅でもやっているみたいだ。何とも親切なサービス。

駅の待合室でしばらく過ごしプラットホームへ出た。暗い。しっかり足元を見て歩かないと危ない。乗車口へ並んだが、前の人の顔もよく見えない程、ここも暗い。頻繁に来ない列車のために明かりを点けておくのは無駄だけど、ホームに出る時くらいは明るくするべきだろう。
中国は、電気のムダ使いにはとても敏感だと感じたのは、北京駅へ着いた時だった。プラットホームから中央通路へなだらかなスロープを下りて行くと、その中が暗いのだ。こんな大都会の中央駅なのにと、不思議だった。台北駅でも地下通路が薄暗くて、不便に思った事もあった。日本の省エネも、電灯に関しては未だ大らかなようだ。

動車組Dの車両は真新しい新幹線タイプの寝台車だった。それを座席として使っている。向かい合った2段ベッドはそのままセットされた状態だ。横に4人は十分座れるシートを3人で使うから、ゆったりしている。私等が入った部屋には4人座っていた。孫娘は珍しいのだろう、ベッドの上段に上がって行った。


5. 深夜、上海駅前をさ迷う

上海虹橋駅までは帰ってきたが、どうも上海駅までは地下鉄が動いていないみたいなのだ。この駅に着いたのが22時14分。售票処へ行ったが、上海駅へ行くよう言われたみたいだ。
急いで2号線には乗ったが、人民広場駅から上海駅方面の地下鉄は終了していた。時刻は未だ11時にもなっていないのにだ。慌てて地上に出ると、タクシーなのかホテルなのか、やたらと呼び止められる。それらを振り切って大通りへ出た。そこからタクシーを拾って上海駅へ向かった。
そこでも、またもや国の事情の違いが。上海駅でのチケット販売は終了していた。駅の右側、大通りの地下道をくぐって向こう側に行くようにと言われたそうだ。ところが、もう本日分と深夜便も含めて販売は終了してた。
と言う事は、今日は蘇州へ帰れないのだ。娘はしきりに夫に電話していた。そう高くないから上海駅前のホテルに泊まったら、と言われたそうだ。
それからが、何とも大変で、中国独特の制度に苦しめられる結果になったのだ。


かつて中国の外国人価格はひどかった。広州交易会に行くと、そこでのホテルの宿泊料は現地の人の10倍近くもしたように思う。この制度はベトナムでも廃止されようとしているが、どうも良い感じがしない。それと今も続く、安ホテルの外国人を泊めない制度、これも国の政策だ。99旅館チェーンでもHPの予約欄に、外賓を接待しません、と書かれている。外国人は高い宿に泊れと言う事だ。

ホテルのカウンターで一生懸命交渉していた娘が、このホテルは、どうも外国人はダメなようだと言う。そしてそのホテルが紹介してくれた所へ行くと、休業していた。それで次のホテルへ行くと、また外国人はダメだと言う。パスポートを見せたが、ちょっと問題の内容が違うようだ。
私等の感覚では理解できない、何とも不思議な国だ。

それで結局は、ずっと付きまとっていたおばさんに聞いてみる事になったのだ。娘も私も、そのような自分の意思以外で連れて行かれるのは嫌いだった。だけどもう深夜だ、見てみるだけでも、と思い案内してもらった。
いくら深夜とは言え、何とその人は、広い大通り、信号のない所を渡って行くではないか。宿は大きなビルの4階にあった。『上海屏翰招待所』と書かれている。エレベータを降りると小さなカウンターがあり、覗きこむと受付の女性がいた。320元とか表示があった。連れてきたおばさんは220元だと言った。
部屋をチェックし鍵を調べた。ちょっと古めのホテルって感じだ。バス、トイレ共にそんなに悪くはない。ツインルームはそれなりにゆったりしていて、私が韓国で泊まる旅館よりはずっときれいだ。それでも娘は全く馴染めないようだ。とんだハプニングで着替えなど持っている筈もない。汗まみれなのにシャワーもできない。それでも部屋はエアコンがよく効いていて、何とか眠れそうだった。孫娘はもう眠くてふらふらだ。





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紹興駅のプラットホーム。左側半分が高速鉄道用のホーム。階段があり、少し高くなっている。







MOUSE この通りの真ん中辺りにあった『周家食品』と言う店。TVで見た人が店主らしい、注文を聞いてくれた。左の写真のタレには、「辣醤、甜醤、免費吃、但不要浪費」と書かれていた。

魯迅故里の入り口にある広場。右側に案内所があって、各施設の入場整理券を発行しているようだ。


魯迅ゆかりの施設や土産物店、臭豆腐の店等がある魯迅中路。



魯迅故里の広場横にある、酒を販売する店。雰囲気も良いし種類も豊富だ。15年物の黄酒を試飲させてくれた。



















紹興駅には、手洗い所の入り口付近に給湯設備がある。カップラーメンにお湯が入っていた。














上海・虹橋駅に到着。プラットホームの幅が広くゆったりしている。床はピカピカだ。