江村

 江村のタイムカプセル                                   6/22(火)

6時30分に起床。移動日のため部屋の片づけをする。今日の夕方にはソウルに入る予定だ。
昨夜簡単に洗った下着が少し湿っぽい。

宿のアジュマに鍵を返し挨拶をすると玄関の外まで見送ってくれた。ちょっとおっかなびっくりで入った宿だったが、なかなか馴染むといい感じで過ごせた。アジュマの人柄も良かった。今度もここにしようと思う。

市外バスターミナルへ8時過ぎに着いた時、勘違いに気づいた。
春川行きのバスは、6時30分の次は8時30分と思っていたのだが8時だ。その次は9時30分になっていた。とりあえず切符は買ったのだが、ちょっと時間を持て余す。仕方なくまたこの辺りのぶらぶら歩きをする。お世話になった観光案内所にも挨拶に行ってみた。
その後、待合所にある売店でコーンのお茶と緑色の餡の入ったパンを買ってベンチで食べた。自販機のあの甘いコーヒーも飲んだ。

市外ターミナルは高速ターミナルと比べてローカル色が強くてのんびり過ごす事ができる。ここも切符売り場と小さな売店があるだけだ。それにベンチに座っていると様々な人間模様を観察する事ができる。これは私の旅には合っていると思う。平日のターミナルには概して高齢者の方が多いようだが、今日は若い女性と軍人さんが数人いた。この人達を見ながら頭の中でドラマを作りあげた。

9時30分春川行きに乗る。のこぎりの歯のように切り立った岩山の麓まで行って、長いトンネルに入った。”このトンネルの完成でソウルまで2時間50分”と垂れ幕が出ていた。随分便利になったようだ。こうなるとやはり航空需要は減ってしまうのだろう。襄陽国際空港は十分稼動していないようで、ソウル行きの便もない。
深い山の中の道だが、4車線でカーブの少ないりっぱな道がずっと続いている。バスのスピードもかなりなものだ。

途中のバス停は少なかった。洪川(ホンチョン)まで国道を走り、そこから高速55号線で春川へと向かう。
ソウル直行便は洪川からまっすぐ高速60号線を走るようだ。この道路のおかげで江原道の東海岸沿いの町も、山の中も大変便利に生活できそうに思った。

春川市街地へ入ると何箇所かに停車、運転手が場所を案内して乗客を降ろしていく。市庁近くで降りれば良かったのだが、どこで降りようかと見覚えのある場所を探していると、橋を渡って市外ターミナルに着いてしまった。

ターミナルの中にある観光案内所へ行き、江村の辺りが入っている地図をもらう。
するとべらべら喋ってきて、何も言っていないのに冬ソナの日本語パンフレットとか春川観光の小冊子まで渡してくれた。これって全然必要ないんだけど、と思いながらも、折角くれた物をつき返す、そんな失礼な事はできない。仕方なく、それでもお礼を言って貰った。
そして昨年も乗った江村方面への市内バスの番号を確認しておいた。
このバスターミナルはまだ新しい。隣のEマートともくっついていて便利だ。少し離れていた高速ターミナルもすぐ横に移動してきたみたいだった。

チョッと明洞辺りも歩きたかったので市内バスで移動する事にした。大通りの陸橋を渡り向かい側のバス停へ。すぐ傍ではタクシーが何台か客待ちをしている。そしてカップルに声をかけてあれこれ話ていたと思うと、乗せてしまった。観光地を何箇所か巡るような客だったのだろうか。
私は、タクシーは余程でないと使わない。殆ど歩きだ。
このバス停からのバスは全て春川明洞を通ると聞いていた。市内バスは均一料金1000wだ。中央市場の前で降りた。
夏の市場は冬とは雰囲気がかなり違っていた。道端の露店も、しゃがんで野菜を売っているアジュマも、この暑さじゃどうしようもない。野菜はすぐ萎びてしまうし、何たってこの日差しではアジュマも参ってしまうだろう。
中央市場のアーケードの下は衣料品のハンガーがぎっしりで、通りの真ん中に食べ物の屋台が所々にある。食品を昼間からこんな所に置いていたら痛んでしまいそうだ。アジュマも活気がない、単に店番といった感じで座っているだけだ。

明洞に建設中だった新しいショッピングビルはきれいに出来上がっているように見えた。
でも中は閑散としていて空きスペースが多い。未だ十分テナントが集まっていないのか、有力店舗が入居していないのか。それとも未だ正式に開店していないのだろうか。客層は、商圏は、商品構成は。
私が心配する事もないので、チョッと覗いただけで通り過ぎた。

お昼近くなり、明洞のマックへ入った。お昼のタイムサービス中だ。プルコギバーガーセットを注文する。2階席は殆ど客がいなかった。それでも12時を過ぎる頃になると7組程のテーブルが埋まった。私のお昼休憩はかなり長い。東南アジアの暑い国だと特にそうだ。

ゆっくりお昼休憩をした後、再び明洞をぶらぶら歩く。この暑い中、冬ソナのフラッグがあちこちで力なく垂れ下がっていた。夏の冬ソナなんてどうも感じが出ない。

明洞を出て、前の中央路にあるバス停で江村方面行きのバスを待つ。アジョッシが話しかけてきた。日本人だと言うと日本語での話しになった。中学2年まで日本語教育だったらしい。江陵で出会った人の話もした。しばらく話した後で、その方のバスは来たようで手を振って別れた。バスは頻繁にやって来るが私の方面はなかなか来ない。かなり待ってやっと50番がやって来た。

市外バスターミナル前を通って、山の中へ入りダム湖へ出た。かなり走ってやっと見覚えのある大きな橋と江村駅が見えてきた。駅前のバス停では多くの客が降りた。私は先ず清涼里駅までの切符を買っておく事にした。街歩きをするので2本後の便を買おうと思っていた。
駅員さんは、次のがすぐあるよ、と言ってくれたが、その次のでとお願いした。

通りに沿って江村の市街地を歩く、と言ってもそんなにたくさん店がある訳でもないのだが。太陽光が痛いほど照りつける、そんな午後の江村の中心街。
この通りに沿ってレンタサイクルやバイクなどの店が何軒も続いていて、大きな駐車場には数えきれない程の自転車やバイクが並んでいた。ユースホステルがあったり、学生の合宿所があったり、これからの江村は大賑わいなのだろう。通行人を見てもそんな年代の人達が殆どだった。
九曲の滝辺りから山へ向う人も多いのか登山の服装も多く見かけた。ただ、その人達はグループでしかも高年齢の人が多いようだった。
喫茶店にレストランや韓食堂、おみやげ屋などが所々にある。ここの名物料理は何なんだろう、店の看板を見ながら歩いた。

駅前に戻り、しばらく橋の方から大きいダム湖を眺めていた。
踏切が閉まり、16時28分発清涼里行のムグンファ号が8分程遅れてやってきた。

江村駅はコンクリートの塊で天井が覆われており、かなり圧迫感がある。プラットホームの壁には、若者がたくさん訪れる場所にふさわしい極彩色の大きな絵が一面描かれている。
清涼里方面の先頭が1号車になる。1号車19番には学生風の女性が荷物を置いて広く使っていた。私が行くと荷物を片付け窓側を開けてくれた。
京春線は所々で複線電化の工事が行われている。これが完成すれば急行の電車が高速で走り、春川が一気に都会になってしまいそうだ。

清涼里駅は駅舎が殆ど完成していた。やはり今まで通り高い位置からエスカレーターとエレベーターでバス停の方に降りる事になっていた。デパートも入った複合施設になる筈だから、このビルが全て完成するのはまだ少し先なのかも知れない。ロッテデパートの裏も再開発されていっているようだ。あの白い窓で働く住人はどうなったのだろうか。

街はもう薄暗くなっていた。宿は8時の予定にしていたので、このまま地下鉄1号線に乗って向かう事にした。
木洞駅で降りると、こんな時間なのに小・中学生の子供達がスクールバスに乗ろうと群れをなしていた。
韓国は随分と教育熱心なお国柄だとは知っていたが。今の日本は休みと時間短縮などで学力は急低下している。将来の日本と大きな差がつかなければ良いのだが。

やすらぎは若いスタッフが迎えてくれた。もう4度目になるので、館内の説明は省略してもらった。先ず部屋へ案内してもらって、事務所で支払いを済ます。
この方、Sさんは日本語を流暢に話す。日本人と言われれば信じてしまう程だ。ラーメンでも作りましょうか?と聞いてくれた。
部屋に戻ってPCのスイッチを入れたがネットに繋がらない。昨年は何の問題もなく使っていたので不思議だ。Sさんに聞いてみたら距離の問題かもと言う事になり、食堂に場所を移す。
でもこれが全く反応しない。LANケーブルで接続すれば繋がるのだが。
この後、Sさんと、宿泊しているアジョッシの二人で大奮闘、2時間も費やして調整してくれた。結局私のPCの無線LANと相性が悪いようだったので、SさんのUSB接続用器具を借りる事になった。二人には随分と迷惑をかけてしまった。

もう夜も11時近くになっていてお腹が空いたので、食事をしようと外に出た。いつもは大通りを新亭ネゴリの方へ歩くのだが、今日はこの路地の奥の方の店へ行ってみる事にした。周りは人通りもあり店の看板で明るい。そして2ブロック先にキムパッの店を見つけた。

厨房では食器を山積みにし今も洗っている最中だった。テーブルには新聞と本を見ている人が2人いた。まだ営業してるのかよく分からなかったが、壁に貼ったメニューの中からセウポックパップと言ってみた。アジュモニがチラッとこちらを振り向いて、分かったといった感じだ。
私のレベルでは、韓国語のメニューは注文するには良い。何の料理が出て来ようが読めば注文だけはできるから。中国では漢字なので料理のイメージは湧くものの読み方が分からない。表音文字と表意文字の違い、旅人にとってどちらが便利だろうか。

しばらくして、えびチャーハンの上に目玉焼きが載った美味しそうな料理が来た。パンチャン3種類の他にみそ汁とキムチ、どれを食べても美味しかった。
そして、この店のせいでポックパップが美味しいメニューだと覚え込んでしまう事となる。

















春川中央市場の衣料品店が集まる通り。通路の真ん中には食べ物を売っている店もある。この先は春川明洞へとつながっている。




春川明洞の商店街。平日の昼間で、日差しも強く暑いから通行人は少ない。この通りにはやはり冬がよく似合っている。




江村の通りに平行して流れている川。奥が川上となる。この前方右側に九曲の滝がある。



レンタルの店
大通りに沿ってレンタサイクルの店が並んでいる。自転車、バイク、見慣れない4輪車など。





江村市街地で中心の通り。レストラン、カフェにファストフードの店などがある。





『猟奇的な彼女』はキム・ホシク氏が彼女との出来事をパソコン通信「ナウヌリ」に投稿したもので、これはその小説版。
途中から彼女にばれてしまって検閲が入るようになったそうだが、日々の出来事がコミカルなタッチで書かれている。ネットで大人気となり、チョン・ジヒョンとチャ・テヒョン主演で映画化された。
今回の旅の中でも、所々彼らの行動を追った場所を選定してみた。ただ、映画でも強い印象があったから、小説の部分と混同してしまったようでもある。



江村(カンチョン)は彼女と別れる日、手紙を入れたタイムカプセルを埋めるためにやって来た場所。この後、清涼里駅まで戻り二人は別れた。
映画では、カプセルを埋めたのは太白線禮美駅近くの山だし、岩の上でミヤネーと叫んだのは京釜線勿禁駅裏の山、別れる時に列車に乗ったのはソウル近郊の日迎駅になっている。



キム・ホシク氏はこの数年後、別の女性と結婚したようなので、果たしてタイムカプセルは開けられたのだろうか。



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