道峰山

 道峰山の登山                                      6/24(木)

今日は登山の日なので少し早く起きた。素早く用意をして木洞駅へ向かう。途中でソウル駅の観光案内所へちょっと寄りたいのだ。
コンコスに出るエスカレーターに乗って駅の構内にある案内所へ行った。道峰山の地図を貰ったり少し聞いてみようと思っていたのだが。ちょっと勘違いをしていたようだ。観光公社の観光案内センターは鐘閣の近くだ。ここはそのような案内はやっていなかった。貰った地図も道峰山の手前で切れていた。

当て外れで急にお腹が空いてきた。コンコスの方は未だ営業していないようでシャッターが閉まっていた。仕方なくマックに入った。この階にはファストフードの店がとても多い。
この時間帯は朝メニューだ。ソーセージマフィンセットを注文した。コーヒーのカップがずいぶん大きい。そしてコーヒーがやたらと熱かった。蓋を取って飲んだがなかなか冷めるようではない。

北に向かう1号線の電車はあまり混んでいなかった。
地下から地上を走るようになると、頂上付近が岩で覆われた山が左右に現れてきた。あの山かな、と見当をつけてみる。道峰山駅が近づくと左側に大きな岩山が見えてきた。

平日なので、中高年の人が目立つ。殆どの人が派手な登山服に登山靴、そしてステッキを持っていた。この電車が着いて降りた人だけでも50人は下らない。一体この山には何人の登山者が訪れるのだろうか。人気の高さが分かるようだ。地図などなくても大丈夫なようだった。この人達が集団で進むから、遅れないようについて行けばいい。そしてこの辺りは『猟奇的な彼女』で読んだ通りの雰囲気だった。

駅前の広い道路を横切って山の方へ進むと、カラフルなパラソルがいっぱい見えてきた。露店もたくさんある。それらが延々と続いているのだ。登山用品、衣類、食堂、食料品の店。もう登る寸前なのにまだ登山用品を買っている人がいる。お弁当としてキムパッもよく売れていた。飲料水も定番だろう。あとチジミやフランクも美味しそうだ。
私もここで買わなければいけない。でも、もっと先で・・・と思って歩いていたら、ダンキンドーナッツの辺りまで来てしまった。この先には店がなさそうだ。
慌てて後戻りをした。何人かが並んでいる露店に行った。店先ではアジュマが無言でキムパッを次々と巻いていた。ここで順番を待った。前の人はキムパッを4本も買ったようだ。
私はキムパッ1本に水1本、凍ったミルクセーキ飲料を買った。この時は気づかなかったが、このペットボトルの水は凍らせてくれてあった。実にありがたいサービスだ。

トイレも済ませ、左側にあるインフォメーションでルートマップを貰った。お勧めのコースも聞いてみた。すると蛍光ペンで登山道にマークを入れてくれた。日本人には英語で答えてくれる。何か、道峰山だけなら往復で4時間程らしい。私は自分の実力を考えて5時間を予定した。
入山料って小説には出ていたが、そんな場所は見かけなかった。お金を払っているような人は誰もいなかったようだ。

登山道はコンクリートから石畳に変ったが、しばらく歩いても傾斜はなだらかで疲れない。周りは大木が立ち並ぶ森の中。登山者も多くてそれなりに雰囲気は出てきたが、まだこれでは登山とは呼べない。
右側に丹青が鮮やかな韓国風のお寺が見えてきた。白人女性3人が山門を背景に記念写真を撮っていた。

森林の中の道をどんどん歩いて行く。
歩いて汗はかくものの木漏れ日の中の道は涼しい。山道を少し外れた場所では昼食が始まっていた。
休憩もしたい、あの美味しそうなキムパッも食べたい、少しでも多く登っておこう、と思う気持ちとが葛藤する。

左側に、少し平になって座れそうな岩を見つけた。
木陰になっていて涼しい。近くには数組が食事中だった。
先ず凍った水を飲む。冷たい感覚が体の中を移動していくのが分かる。と同時に生気がよみがえってくような気分だ。
水はまだ半分以上凍っていた。あの店のきめ細かなサービスに感激。

東南アジアでは必ずミネラルウォーターのボトルを持って歩くが、最初からあまり冷えてなかったり、暑い中ではすぐ温かくなってしまったりする。さすがに韓国のアジュマ、この水は何物にも代えがたい最高のご馳走だ。

キムパッにたくあん2個、ご飯にはまだ温かみが残っていた。よく考えれば、さっきアジュマが巻いてくれてからそんなに時間は経っていない。これも具だくさんでとても美味しい。
まあ、こんなロケーションで食べれば何でも美味しいとは思うのだが。
私はゴマ油を塗った韓国のキムパッが大好きなので、こんな大自然の中で食べる味は最高だった。
ミルクセーキも殆ど凍ったままだ。少しづつ溶かしながらながら飲む。まろやかな甘さが疲れを癒してくれる。普段はこの種の飲み物は買わないから、美味しいものを新たに発見した思いだ。

もっと登山道から離れた所には、大きな岩がごろごろしている谷川が流れていた。
そちらでビニールシートを敷いて賑やかに食事をしている家族もいた。
しばらく登山者を見ながら休憩した。

汗も引いてきたところで、気合を入れ直し歩き出した。
これから先は険しい石の道が続いている。傾斜も徐々に急になってきた。苦しい。
歩く時間と立って休む時間とが同じ位になった。

しばらく行くと急な長い階段があり、途中から登山道と分岐して右側のお寺へ続く道があった。
その中程で立ち止まって休憩していると年配の方に声をかけられた。日本人だと言うとその方も日本語で話し始めた。80才だそうで、小学校は日本語教育だったらしい。
フランスへ留学した事とか、東京にも行ったとか、昔話をたっぷり聞かせてもらった。その方も登山されてるとばかり思っていたら、お寺の方だったらしく、この分岐で別れた。リタイアされた経営者か学者のような方だった。

私は左側の階段、登山道を歩く。
しばらく行くと木々の林が切れて視界が広がった。巨大な一枚岩の上に出た。とても見晴らしが良い、麓に高層アパート群が見えた。

ここは慎重に歩かないといけない。岩から滑り落ちたら大変だ、つかまる所もない。
山頂から下りてくる人はこんな場所でも小走りだ。まるで忍者のように思えた。私は一歩づつ踏みしめながら歩く。登りきって上から眺めると、そんなに危険なようでもなかった。ここはロープも手すりも付いていなかった。

そこからまた山林の中の道を進む。道と言っても自分で選んで歩いているのが道となる。この辺りはずっと大きな石がごろごろしていた。
しばらく登ると、林が切れてすぐ前方に岩壁が見えた。一瞬、頂上にたどり着いたのかと思った。
そこは巨大な岩壁の下に広がった休憩所のような場所だった。多くの人が座っていたり、散策したり、自由に楽しんでいた。
ここから上は岩肌を登る登山道だ。これだと、ここまで登って下りる人もいるように思う。
私もしばらくここで休憩を取った。座っていても汗が体中を流れる。水はとっくに飲み終えていた。









案の定、岩肌にはロープが垂らしてあり、鉄パイプの手すりが所々取り付けられている。私の街歩きの格好ではチョッと不安もあったが、ここまで登って頂上に立たない訳にもいけない。意を決してロープを握った。
靴底が平で岩肌を捉えてくれない。殆ど手で引っ張る力で進んでいるようだ。
それでも、この登りは気力で十分だが下りってどうなんだろう、多少の不安を感じた。

頂上には5、6人いるようだ。全部で十数人ほどのスペースしかない。
数人のグループがはしゃぎながら何枚も写真を撮っている。360度開けているから、撮る方向で景色が全く違って写る。
私は普段自分の写真は撮らないが、どうも今日は違っていた。苦労して登った証拠写真にと思ったのか、撮って欲しかった。
先ほどのグループはやっと撮り終えたようで、頼んでみたら快く引き受けてくれた。お互い苦労して登っているから仲間意識も働く。

その方は、次々と場所を変えて何枚も写してくれた。記念になるようにとの心配りが感じ取れる。ほんとに親切な方だった。カムサムニダ!!と言ったら、さようなら!!と言って下山して行った。旅のイメージってこんなところで一気に良くなってしまう。

下界にはあちこち高層アパート群が見える。登り終えた達成感と疲れ、それにこの素晴らしい絶景を見ていると、すぐには下りたくない心境だ。頂上へ登ってくる人も殆どいなくなり、ゆっくり景観を楽しんだ。
それにしてもこの頂上付近の岩山ってどうなっているのだろう。積み木のように岩が組み合わさって出来ている。つい中の一個を引き抜きたくなった。

下山は鉄パイプにしがみついて少しづつ歩いた。思っていた程は怖くはない。
広場まで戻ると、もう人影もまばらになっている。
休まず歩く。ごろごろ石の道も快調に歩けた。やはり下り道は楽だ。

露店が並ぶ麓の商店街まで帰ってくると、太陽が眩しくじりじりと焼きつくようだ。山道と違ってとても暑い。
この辺りで休憩しようとも思わず、ひたすら駅の方へ歩いた。
バスターミナルから少し下った所で、すぐ前を歩いていた6人のグループが突然左側の店に入った。看板を見ると粉食の店のようだ。コングッスと書いてあるのが見えた。私は何の躊躇もなく引き込まれるように中に入ってしまった。店の奥にはお客がいっぱいだ。仕方なく入り口に近い席に座ったが、すぐこの辺りが空いている理由が分かった。
色の付いたガラスにはなっているが、窓から太陽光が差し込んで来る。
注文は勿論、コングッス。
しばらくして出てきたコングッスは容器の底に大きな氷が張り付いていた。なかなか浮かんでもこない氷、よく冷えた豆乳が美味しい。麺の味は分からない。上に刻んだきゅうりとゴマがトッピングされていた。少し塩を加え味を調えて食べた。

とにかくこの冷たい豆乳スープが美味しいのだ。チョッとざらっとしていて濃厚なスープだ。あれだけ山を登って水1本だったから、この水分は瞬間に体の中に吸い取られていく感じだ。器を斜めにして最後の一滴まで飲んでしまった。
とても美味しかった。このコングッスは最高に美味しくなる条件で食べたようだ。

食べ終えると今日の登山がやっと終わったような気分になった。
もう何も急ぐ事はない。ゆっくり帰るだけだ。











道峰山駅前の大通りから道峰山を眺める。すぐ前の通りは露店や商店が登山道入り口まで続いている。電車が着く度に大勢の集団が進んで行く。





この辺りで水、キムパッを買った。もう少し先で商店街も終わり。ここで買っておかないと。
水は2本買っておけば良かったと思った。







キョヌと彼女は学校をサボって道峰山へ登る事になった。キョヌは彼女の両親から反対されているのは分かっている。
頂上に立った時に彼女が言った。大変な苦労して登ったけど私達はまだ麓にいる事になる。でも苦労してでも登らないといけないと思わない?







登山道とお寺への分岐路。左側が登山道。











道峰山の頂上にある案内板。


道峰山頂上からの眺め。東側。前方の山はスラクサン。


頂上の横に岩が積みあがっているピークが見える。
不安定な積み木のようだ。この辺りの山はこんな岩が組み合わさって見えるのが多い。ひび割れのようだが、誰かが1個づつ積みあげていったみたいだ。さすがにここには登れない。

















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