楊州 

 楊州別山台ノリ                                       6/26(土)

宿を10時30分頃に出た。今日の楊州仮面劇は15時に始まる予定だ。
木洞駅から楊州までそのまま地下鉄で行こうと思っていた。

木洞駅に着いて、T-money カードが無いのに気づいた。どうも忘れてきたみたいだ。新しいのを買うのも勿体無いし、かと言って切符をいちいち買うのも面倒だ。かばんやポケットを何度も捜してみたが見つからない。
仕方なく宿へ取りに戻る事にする。ちょっと雨も降ってきて傘も必要になっていた。道峰山で頑張った足はまだ十分復活していないようで、階段では少し痛んだ。

ビルのエレベーターは5階に停まっている。ま、歩くか。5階まで階段を上って行くとオーナーのオモニに会った。アニハセヨと挨拶をした。
部屋に戻ると、カードはやはりシャツのポケットに入ったままだ。傘も捜して再び出かける。
玄関まで来ると、オモニが「コーヒーでも飲んでいきますか?」と言ってくれたが、「マックに行きたいので」と言って出た。また足をかばいながら階段を下りる。朝から無駄をしてちょっと疲れてしまった。

木洞アパート群に沿った道を通ってマックへ直行した。本来なら今頃は地下鉄の中なのだが。
今日はプルコギバーガーのビッグサイズを注文してみた。さすがに紙のリングが付いた大盛りサイズがきた。一瞬は嬉しくなるが、これはいかにも手強い。とても食べ難い。
楊州へ15時までに着けばいいと思うと、またまた休憩時間が長くなってしまった。

新亭ネゴリ駅で2号線に乗り、新道林駅で1号線に乗り換えた。やって来た電車は逍遙山(ソヨサン)行きだった。ラッキーだ、これだと楊州まで乗り換えなしで行ける。

楊州駅で降り、大通りの向こう側にあるバス停へ行ってみる。昨年と同じだ、路線図を見たがよく分からなかった。
大勢の人がバスを待っている。地元の人だけでなく旅行者もだいぶいるようだ。次々にバスがやって来ては多方面へ出て行く。この近くには大長今テーマパークもあったり、観光スポットもたくさんある。それでバスの便も多いようだ。
14時20分になっていた。私はそんなにゆっくりも出来ない時間なので、タクシーに乗る事にした。
客待ちしているタクシーの先頭車に乗ると、この後ろの車に乗って欲しいと言う。そちらに乗り換えると年配の運転手だ。そのアジョッシが前の車に手をあげて挨拶した。

駅前の国道を北へ走り、楊州市役所の交差点を左へ入ると、しばらくして見覚えのある景色があった。
昨年来たから、まだ一年しか経っていないのに、道路がだいぶ変っているようだ。
以前は楊州郷校の横を通る狭い道だったのだが。右へすっと入るとすぐ別山台ノリ伝承館だった。

もう開始まで30分を切っているのに、人の姿も車も殆どない。観光バスが数台停めてあるだけだ。
確か今日は公演がある筈なのだが。伝承館の中でパンフレットをもらった。右側の部屋ではスタッフらしき人達が大勢で準備をしているようだ。

裏側にあるドームのマダンへ行ってみた。客席はマダンを囲むように円形の階段になっていて、そこには僅かに数人が待っていた。私は正面の中段に陣取りをし、楊州ピョルサンデノリと書かれたパンフレットを見た。写真入で8幕まで丁寧に解説されているようなのだが、全てハングル表記になっている。仕方なく想像しながら眺めた。

開演5分前になって、やっとぱらぱらと観客が入ってきた。前列には地元の交流会か保存会のメンバーなのか、赤いジャケットのグループが並んでいる。この家族ずれのグループを除くと一般人は何人いるのだろうか気になった。
定刻になると、マダンの外から楽器の賑やかな演奏が聞こえてきた。



楊州別山台ノリ











ソウルの松坡山台に対して楊州のは別山台(ピョルサンデ)と呼ばれている。松坡は現在の蚕室付近だが、ソウルノリマダンがあ

るものの、今も伝統文化を守っているのは楊州の方なのだ。元々は同じ系統のものらしい。 議政府が政治・経済で大いに栄えて

いた頃、近くの楊州にも富を持つ者からの資金が入ってこのような伝統芸能が栄えたようだ。


このマダンは休日には公演が行われていて、いくつかの保存会が交代で出演している。ここ楊州の仮面劇には会話がたくさん

出てくるので、韓国語に堪能な方でないと分かり難い。



程なくして、カラフルな衣装を着た踊り子が、伝統楽器を鳴らしながら一列でマダンに入ってきた。一同が輪になりながら、手を振り足を挙げ踊り出した。これが開始のセレモニーなのか。
楽器隊が5人フンニブを被り白装束姿で広場隅に陣取り、伝統楽器を演奏し始めた。しばらくして、仮面を被った役者が次々と登場し仮面劇が始まった。

江陵の仮面劇は会話がなくパントマイムで演じられるから、それなりにストーリーも分かる。パンフレットにも筋書きの解説がされている。
ところが楊州の別山台ノリでは会話がやたらと多い、会話劇のようだ。これではどう頑張っても流れが分からない。
ただ、この種の劇は殆どが、両班と破戒僧にアガシ下人とかが登場する社会風刺的なのが多いから、多少察しはつく。それに仮面は登場人物の人柄とか性格をも表しているから、仮面を見てるだけでも楽しい。仕草も踊りもいいものだ。民俗楽器の演奏が雰囲気を盛り上げてくれる。

途中で急に、マダンにいた白装束の女性が階段を上がってきて、隣に座った。観客は少ないし観光客に興味があったのだろう。「どこから?」と聞かれて、日本と言うと、韓国語が英語に変った。
なぜ来たか、この仮面劇は知っているのか、いろいろ質問責めだ。いい機会なのでこちらからいっぱい質問したかったのだが、会話として流暢に喋れないこの悲しい現実が。
英語も時々使っていないと文法が混乱してしまう。単語を頭に置いて順番を並び替えたりで大変だった。
運営側からすれば海外の客とか興味があったのだろう。よほど好きでないと、ここまでは来ないだろうから。

演劇も終盤に近づくと踊りが多くなった。先ほどの女性も踊っていた。しばらくすると、マダンの方から中に入るよう観客に手招きした。多くの人がマダンに降りて行き、踊りや歌に加わった。マダンが一気に賑やかなお祭りのようになった。
こうして見ていると、地元や近隣の人達みんなで伝統文化を守っていこうとする意気込みが感じられる。

それでも、終わった途端に帰って行くのがやたらと速い。5分もすると誰もいなくなっってしまった。
私は近くの天井のないマダンへ行った。辺りを歩きながら原風景を頭に描いてみた。

大通りへ出てバス停へ向かうと、昨年とはかなり様子が違っているようだ。新しい道路が出来ていてバスの往来もかなり多い。三叉路の向こうに新しいモダンなバス停があった。さて、どのバスに乗ればいいのか、系統図を見てみた。
私は楊州駅でも議政府駅でも1号線の駅ならどこでもよかった。

それで番号を何種類かに絞って待つ事にしたのだが、ここのバスのシステムは大変よく出来ていて、壁面の電子表示板に次々と通るバスが表示されるようになっている。3番目位まで何分後に到着するかが分かる。
韓国のバスは乗用車と同じように、とにかくスピードが速い。近くに来て番号を確認して手を挙げているようでは、一気に通り過ぎてしまう。江陵ではそれで何度も失敗していた。
ところがこれだと次来るバスの番号が分かるから安心だ。
都会地なら珍しくないにしても、こんな郊外の周りを山に囲まれた場所までハイテク化されているとは。
お目当ての番号が来たので手を挙げた。

楊州駅近くには何の店もない。バス停の横で果物を売っているアジョッシの露店。それと駅の中にある売店とちょっとした食堂くらいだ。
駅前の国道は80km/hで走れるから、車がビュンビュン走り去っていく行く。高速道路の中にいるみたいだ。

特に何をするような事もなく、すぐ1号線の電車に乗った。

1号線は東大門駅で降りた。そこから清渓川まで行き、右側の路地に入って焼き魚通りへと歩く。あちこちの店で魚を焼く煙が見えてきた。美味しそうな匂いも漂っている。オソオソ、と招かれるまま店に入った。
アジュマがすぐ水を持ってやってきた。お決まりのコドゥンオを注文する。
魚もパンチャンもすぐ運ばれてきた。以前入った店のように、絵具のようなワサビは付いていなかった。
パンチャンは多種類だがチョッと苦手な物も多い。さすがにコドゥンオはとても美味しかった。

お腹がいっぱいになったところで、ちょっと街歩きをしようと思い、この路地を西へ歩いてみた。しばらくして鍾路5街の大通りを渡ると、明るい電灯に照らされた屋台街が見えてきた。どの店も忙しそうにアジュマが仕込みの最中だ。屋台では客がソジュを飲みながら良い機嫌だ。広蔵市場まで来ていた。

この後、再び清渓川へ戻った。陽は傾いてはいるがまだかなり暑い。川を跨ぐ橋の上のベンチに座った。ここは静かだ、川のせいなのか幾分涼しい。川辺の遊歩道を歩く人達を見ながら一休みした。
都会の喧騒はここでは感じない。時折、市内バスと乗用車が走って来るくらいだ。
ゆっくりした後、地下鉄は1号線の鐘閣駅から乗った。






議政府駅の次、京元線・佳陵駅から京義線の方へ向かって延びている貨物線。電化はされてないが複線になっている。旅客用は現在休止中だが、将来は電車が走るようだ。


楊州別山台ノリ伝承会館のマダン。入口には仮面劇の人形が座っている。
この近くには楊州牛ノリグッ伝承会館や楊州農楽伝承会館もある。



伝承会館の敷地内にある芝生のマダン。もっと広いのもある。昔はちょっとした広場に大勢集まり夜通しノリが行われていたようだが。



ドーム状の屋根のついたマダン。円形の階段が周りを取り囲んでいる。正面の左右に布を垂らした入口がある。



ノリが終わりに近づくと、観客もマダンに入ってみんなで楽しく歌ったり踊ったりだ。












広蔵市場、鍾路4街側から見た入口。この先が屋台街になっている。


広蔵市場の食事処 屋台街。もう少しすると大賑わいになる。スンデにチョッパル、ピンデトッにメウンタン。         


清渓川の水辺はこんな暑い日でも幾分涼しい。ちょっと休んでいる人も多い。




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