11  ソルラル直前のソウルの台所へ

今日はソウルへ入る日だ。7時に起きて、ゆっくり荷造りをし、9時に宿を出た。外は雪が積もっていた。それにまだ粉っぽい雪が舞っている。
南春川駅へのバスはいろいろあるが、1、9、67番を待つ。次々とやって来るものの駅前を通るのが来ない。どの車もスピードを落として走っている。普段では考えられないような運転だ。
1番が来た。運転手の横に座った。バスの前面を見ていると粉雪がきらきら光ってとてもきれいだ。イボン、ナムチュンチョニョクみたいに聞こえた。駅前は再開発地域なのか荒地のまま放置されている。

駅舎の裏側には電化される高架部分が出来上がっている。次のソウル清涼里(チョンニャンニ)行きは10時5分だ。客はかなり多い。駅舎の中は人であふれるようになった。
切符を買おうと並んだ列が悪かった。先頭のハラボジが何か変な事を言って長引いている。駅員がついに大声で怒鳴りあげた。やっとその人が切符を持って列から外れた。
チョンニャンニカジハンジャン。5600Wだった。ちょっと安く感じる。切符は買ったがまだホームには出してもらえない。自然と改札口に人が集まってくる。
近くの自販機でコーヒーを出した。甘いあのコーヒー。何故か寒いとこれが旨いのだ。

列車は左側に座った。後でこれが失敗だと気づく事になるのだが。まあ指定席だから仕方ないけれど。南側の窓には、太陽がいっぱい差し込んできた。カーテンを閉める。楽しみにしていた、雪の江原道の景色は見えなくなってしまった。それでも、周りの人の事を考えると閉めざるを得ない。時々そっとカーテンをあげて景色を見た。田畑も山も、すっかり雪で覆われていた。

清涼里には12時前に着いた。車外へ出ると猛烈に寒い。雪も積もっている。
すぐに京東市場へ向かう事にした。ソルラルの休みが明日からだ。お正月準備の買い物風景が見たかった。足元が滑る。陽のあたっている所は雪が解けてじとじとだ。どこを通っても歩き難い。
新しい駅舎は鉄骨組みがほぼ出来上がっている。商業施設も入る複合駅になるみたいだ。
お正月前の雰囲気がしてきた。街の中心部への車線が渋滞で全く動いていない。露店もたくさん出ているし、市場は人で溢れかえっていた。私は今まで何度もこの時期にここに来ている。
ところがちょっと何かが違うように思えた。通路が何とか歩けるのだ。それにクルビも少ない。肉も果物もどんどん売れているようではない。やはりこの金融危機とウォン安が直撃なのか。

祭基洞(チェギドン)から地下鉄に乗って鍾路3街で降りる。T-mony cardに2万Wのチャージをした。一年ぶりのソウル、ぶらぶら歩いてチョンノタワーまでやって来た。
そこから郵政局路を北へ入った所の、キンパッの店でピビンパッを食べた。
特に当てがある訳でも無かったが、何故か北村の方へ足が向く。北村から三清洞ギルにかけては伝統家屋の残る地域である。ここには街の喧騒はない。狭い路地には昔の漢城がある。
安国から三一路を通ってタプコル公園まで歩き鍾路3街まで戻ってきた。荷物がやっかいなので、もう宿に向かう事にする。

今回の旅で唯一予約を入れていた宿だ。地下鉄5号線の鍾路3街から木洞へ。やすらぎ、ここはゲストハウスになるのかな。オーナーは変わっていた。
玄関のドアロックキーの番号を控える。これも変えたようだった。7日分119000Wを払って部屋に入る。部屋はベッドの横に60cm位の幅のスペースがある。狭いが、それなりに快適なのである。オンドルは入っているがそれほど暖かくはない。今夜のソウルは-15度位まで下がりそうだとオーナーが言う。布団をもう一枚もらった。
ここは部屋でPCが使えるのだ。早速マイPCのSWを入れてみる。最近ケーブルから無線LANに変わったとか。快適に繋がった。

ベッドに横になっていると、うとうとして眠ってしまった。8時に目が覚めTVをつけてみる。ドラマとニュースをしばらく見て、10時になってから夕食に出かけた。すぐ前がダンキンドーナッツの店で、通りを新亭ネゴリの方へ歩くと、飲食店はかなり多い。キンパッの店に入った。キンパッとカルグッスを食べる。明日から休みなのでこの時間でも、どの店も客はいる。酔っ払いも多いようだ。
宿に帰ってソウルナビで、明日から行われるソルラルの行事を調べた。



12  南山韓屋マウルでソルラル前日を楽しむ

朝はゆっくりだ。TVを見たりネットでいろいろ検索したりして過ごしていた。
ソウルっ子は、今日から3日間ソルラル前後の休みに入るのだ。いろんな所でも催し物もあるみたいだ。11時になって、やっと出かける気分になった。ソウル滞在は長いからあまり急がない。

新亭ネゴリの方へ歩き、市場に入って様子を見た。今日は客が殆どいなかった。店は開いてはいるが、古い市場で中は薄暗い。裏の広場には、りんごとみかんの箱が積まれていた。今日売ってしまわないといけないのだろう、と勝手に思う。
マックへ行った。プルコギバーガーを食べる。因みに、韓国ではハンバーガーをヘムボゴと言う。只今サービス時間帯だ、セットで3000Wになっていた。ソルラルは関係ないようだ。
外を眺めると、前が見えない程の大雪になっていた。雪のお正月、楽しみだ。

ネットで見ていたら、韓屋マウルでお正月の行事があると書いてあった。ちょっと行ってみようと思っている。

地下鉄を乗り継いで忠武路へ。入口まで来ると、凄い人数が出入りしている。門の中に入ると、大勢の人がそれぞれ韓国伝統の遊びに興じている。
・ノルティギはシーソーらしきものでお互い高く跳びあがる。・トゥホは数メートル離れた所から筒に矢を投げる。・ユンノリ はサイコロの代わりに4本の棒を投げるすごろく。・チェギチャギはチェギという紙製の玉を足の甲で蹴って遊ぶ。
他にも駒回し、運勢占い、とかいろんな遊びがあった。皆一様に楽しそうだ。

その広場から少し上がった所の門をくぐると、大きなテントがいくつかあって、その前で餅つきをやっていた。
韓国の臼は、厚い板の中央に大きな窪みを作ったもの。そこに餅を置いて杵でつく。テントの下ではお雑煮を振舞っていた。私も行列の後ろに並んでみた。使い捨て容器に入れてくれた。丸い棒状の餅をスライスしたもの、卵焼きの短冊、海苔等が入っていた。汁は白く濁ってどろっとしているが、薄い塩味でさっぱりしている。

その広場の周囲にはいろんなイベントをやっていて、その中で黄色い紙に開運印を押してくれるコーナーがあった。欧米か!の、外国人も並んで待っている。
私も並んだ。そして財の字が入っているのを選んで押してもらた。今年は良い年になればいいのだが。でもお正月が二度来たようで嬉しかった。

この奥には両班の家屋など5棟が配置されていて、当時の生活様式をうかがい知る事ができるようになっている。
伝統庭園などもあって、ソウルで手軽にタイムスリップできる場所である。そんな事で映画やドラマのロケ地としても時々使われているようだ。
ソルラルと言う事で、各家屋が工夫を凝らしたイベントをやっていた。その全てを歩いて回った。

韓屋村では休日にパンソリやタルチュムなどの公演もやっているみたいだが、私はいつもこの時期に来るので、残念ながら未だ一度も味わった事がない。

そうこうしていると、下から大きな音で民俗楽器の演奏が聞こえてきた。若者達の熱演だ。この寒空、下着ほどの物しか着ていない。体を揺すって全身で演奏している。じっと聞き入った。雪がまた、かなりの勢いで降ってきた。

マウルを後にし、明洞まで歩いた。ミリオレの前から見ると凄い人で混み合っている。殆どの人は今日から三日間休みなのだ。オモニは汗だくでソルラルの準備をするが、男どもは何もしないらしい。
その事でいつも夫婦喧嘩になるのだとか。出かけているのは男どもと子供達なのか。
ユニクロは客が少ない、でもあのビルを使って全面展開しているようだ。明洞衣料の頃にはよく入ったものだが。全州屋の傘を被った名物おじさんもいなかった。

乙支路2街から清渓川を渡り、ピアノギルまで来た。もう薄暗くなってはいるが鍵盤のところは少し明るい。
プラハのドラマでチョン・ドヨンが足で弾いていた。♪ どうしよう、あなたが急にいなくなったら。どうしよう、あなたを失ってどうして生きようか・・・

ここから向こうはグルメの街、飲食店が多い。日本人も多いのか日本語の表記も多い。日本語が飛び交っている。日本食メニューの食堂に入ってみた。かつ丼のセットを注文する。さすがに接客が韓国人であっても、言葉の心配はない。うどんが付いてきた。味はそれなりだが懐かしく食べた。客は韓国の人が殆どのようだった。

その後ソウル駅まで歩く。清渓川のイルミネーションも市庁前の広場の明かりも少なくなっている。アイススケートの客もかなり少ない。数年前と比べると明らかに華やかさがない。どこも暗い。不況なのだと思った。
私はソウルに着くと、南大門とソウルタワーで韓国を感じる。その南大門も今はフェンスで囲まれてしまっている。

ソウル駅は混雑していた。帰省客がまだ列車を待っているようだ。人混みの中で、しばらく皆と同じように大きな画面のTVを見ていた。各地の大雪に関するニュースをやっていた。
渋滞も事故も多かったようだ。



13  ソルラルは朝から王宮めぐり

昨夜はネットでソルラルの行事を探してみた。
主な王宮は無料で開放されるみたいだった。その中で雲峴宮(ウニョングン)でもイベントがあるらしいので、今日はここから出発する事にした。地下鉄安国が最寄駅だ。雲峴宮は興宣大院君の私邸で、朝鮮王朝最後の王・高宗が即位するまで12年間育った所。

お正月の事だし、ゆっくりと宿を出た。もうお昼近い。こんな時間でも、三一路は人影げはまばらだった。車も殆ど走っていない。
儒教文化の韓国では、ソルラルとチュソクは一族が集まり、先祖の供養をし墓参りするのが一般的と聞いている。
日本でも元旦は、ゆっくり起きて、家族でお正月の挨拶をし、お雑煮を食べて、後はこたつでごろごろ・・・こんな感じの人が多いのではないだろうか。
私なんぞは子供の頃には親から、元旦にお金を使うと一年中無駄使いをするようになるから家で居るように、と言われていた。田舎の話だけれど。

三一路に面した入口から入ると、左側の隅の方に舞台があった。マイクとか大きなスピーカーが置いてある。何か始まる事は確かだ。
右手の方には伝統的な遊具があって、数組の親子がはしゃいで遊んでいる。
女の子は上にはコートやジャンパーを羽織っているものの、殆どチマチョゴリを着ているので、鮮やかな色彩がとてもきれいだ。家屋の内部を見ながら一周した。ここもスキャンダルなどの映画ロケに使われたようだ。しばらく舞台には何も起こらない様子なので、王宮回りに出掛ける事にした。

昌徳宮(チャンドックン)の門の前にはツアー客らしきバッジを付けた、大勢の観光客がいた。どうやら案内する言語別に、時間帯が決まっているようだ。手に持っているパンフレットで地域が分かる。
ここは景福宮の離宮として建てられたもので、王朝時代の造園技術や伝統的な宮殿建築を見る事ができる。世界遺産にも登録されているようだ。でもソルラルのイベントは特に無さそうだった。

昌慶宮(チャンギョングン)は昌徳宮とは塀で接しているのだが、入口はとても離れていて遠い。宗廟から繋がっている橋の下をくぐり、長い塀に沿ってしばらく歩く。この辺りに入口が一か所位有っても良さそうなのだが。
入口の弘化門をくぐると正面にもう一つ門がある。その先に明政殿がある。右手の小さい門をくぐって入ると、広場があって、大勢の家族が伝統遊具で遊んでいる。テントも何張か出ていて、いろんな物を作る体験教室みたいなのをやっている。
その前の建物の中をのぞいてみると、正装をした子供達が挨拶の作法を教えてもらっていた。立って、座ってお辞儀をして、また立つ。この作法、ドラマではよく見るが、子供の頃から、しっかり教え込まれるのだろう。
日本人はこんなのには無頓着だ。最近では挨拶もろくにできない人が多い。ドアも平気で2回ノックする。私は管理職であっても、職場ではアルバイトの人にでも、こちらから先に挨拶をするようにしている。そうでもしないとできない人が殆どなのだ。

宗廟(チョンミョ)の方へは簡単に出られるようになっている。先程の橋を渡れば良い。
ここは歴代の国王と王妃の位碑を祀ってある所。広い森の中に正殿と永寧殿の大きな二つの建物がある。ここだけは参拝する所なのだろう、あの韓国式礼拝をしている人を見かけた。
出口に近づくと10名位のグループを引率したガイドが二組いた。日本語で話している。こんな日は外国の観光客だけが目立つのかも知れない。

鍾路3街へ出た。マックへ入る。今日はさすがに店は殆どどこも開いていないのだ。鍾路の広い通り、見事に閉まっている。
プルコギバーガーを食べる。韓国限定のこれがとても美味しい。これだけ店が閉まっていても、マックが混んでいる訳でもない。やはり家族や親戚と一緒に過ごす日なのだろう。そんな中、外国人が特に目につく。ロシア系、インド系、アラブ系とかだ。

鍾路から仁寺洞まで歩いた。
こんな超一級の観光地でさえ全ての店が開いている訳ではなかった。通りには食べ物やアクセサリーなどの屋台がぱらぱら出ている。
店をのぞきながら安国の方へ歩くと、左へちょっと入った所にテントがあって何かを振舞っていた。入口にはハングルで無料と書いてある。
その奥の広場ではやはりお正月、伝統遊具の遊びに興じている。こうなると大人も子供も同じ次元だ。むしろ大人の方が熱心に遊んでいるようだ。子供の頃、今の時代以上に、こんな遊びをしていたのだろう。
テントの中に入ると紙コップに粉末のココアを入れてくれた。それを持って前のテントのお湯を入れるようにと教えてくれた。甘いミルクココアだった。コップのお湯で手を温めながら飲んだ。

仁寺洞から栗谷路の交差点を左へ、景福宮(キョンボックン)へ。朝鮮王朝を興した李成桂が建てた王宮だ。景福宮へは、三清洞ギルから入る。ここだけは大混雑していた。歩行者用の信号がなかなか変わらないのだ。
車も渋滞している。警官が誘導しているが、返って混雑に拍車をかけているように見える。お正月休みなのか、いつもの衛兵はいなかった。目の前に立ってじっと眺めても、ぴくりともしないあの衛兵達だ。
正面の興礼門から入り勤政門から勤政殿へ、その後は右手へ出て国立民俗博物館へ。ここでイベントがある筈なのだが。
スケジュールが貼り出されていた。外はテントの体験コーナー。そして広場ではやはり伝統遊具だ。かなり歩いて疲れたのでしばらく休んだ。でも未だ徳寿宮(トクスグン)が残っている。
大通りを渡って世宗路を南へ歩く。政府機関や警察庁などのある警備の厳しい地域だ。

徳寿宮の長い塀に沿って歩き、中に入る。それにしても無料開放はいい。手間がかからない。ここには初めて来た。西洋建築と朝鮮伝統建築とが同居していると言うのだが。ちょっと違和感があった。やはり全部瓦屋根であって欲しかった。

かなりお腹が空いてきたが、食事系は開いていない。
営業しているのはファストフード(ただこれも一部閉まっていた)と喫茶店位のものだった。ソウル駅まで行けばフードコートもレストランもいっぱいあるのを思い出した。駅なら大丈夫だろう。すぐ先だから頑張って歩く。
それでもコンコスの方は閉まっていた。レストランも開いているようではない。ファストフードだけなのか。
3階に上がるとフードコートは営業していた。しかし相変わらず客は少ない。
入口でチケットを買い、中央の席に座って赤い電光掲示板を見ながらじっと待つ。テンジャンチゲを食べた。思いっきり辛いスープだった。前にここでキムチチゲを食べたら舌が痺れたので、今日は
こちらにしたのだが同じだった。

地下鉄1号線で新吉(シンギル)まで行って5号線に乗り換え新亭駅で降りた。午後8時に宿に着いた。


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  ソウルへ向けて発つ朝、春川は雪が降っていた。





      ソルラル前、賑わう京東市場。


       京東市場の店に並んだ商品。

       京東市場の店に並んだ商品。

       京東市場の店に並んだ商品。




南山韓屋マウルの催事場で雑煮の準備をしているアジュマ。大勢並んで待っている。私も並んだ。



若者達による民俗楽器の演奏が行われている。寒風の中鉦や太鼓の音が辺りに響き渡る。



大晦日、明洞は大勢の買い物客で賑わっていた。





ソルラルの王宮めぐり。各王宮では様々なイベントが企画されていた。しかも特別に入場無料だ。


     静かなソルラルの王宮、お昼時。







仁寺洞の入口にはこのような屋台が何台か出ていた。



     景福宮から北漢山を臨む。


          ソルラルの景福宮


   景福宮の勤政殿の中にはこのような祭壇が