18  豊南門から韓屋村を歩く

7時に宿を出た。新亭駅7時15分。地下鉄5号線から、鍾路3街で3号線に乗り換え南部バスターミナルへ向かう。天気は良いし暖かい朝だ。久しぶりにリュックを曳いてみると地下鉄の上り下りがとても大変だ。

南部バスターミナルは庶民的だ。高速ターミナルみたいな華やかさはない。KTXとムグンファ号の違いと言ったところか。

時刻表を見ても、全州が見つからない。昨年は全州からここに着いたので、便は必ずある筈なのだが。
プラットホームには전주(全州)の案内板が有った。やはり便はある。
もう一度パネルを探した。あった、分かり難い所だ。30分毎、10500W、所要時間は2時間40分となっている。このターミナルは慶尚北道と慶尚南道方面が多いようだ。

少し体調が芳しくないので、少しベンチで休んでから切符を買いに行く事にした。
昨夜木洞駅を出た所で再び買ったケランパンが原因なのか、ちょっと胃がすっきりしない、南山の疲れもある。

ところで、窓口で切符を買う時だが、私は清州と全州の違いが発音できないのだ。カタカナで書けば両方共チョンジュ。
nngの違いなのだけれど難しい。以前、宿のオーナーに尋ねて何度も練習してみた事があった。
昨年は”全”と書いて見せて、今回はガイドブックの全州を指さした。英語のLとRより難しい。

9時30分発。私の指定席は最後部になっているが既にグループが占領している。仕方なく一列前に座る。あとからやって来た人が席を探しまわっている。運転手がどこにでも座れと怒鳴るように言った。
ほぼ満席で出発した。このターミナルは一般(イルバン)バスが殆どみたいだ。高速ターミナルは優等(ウードゥン)が中心で一般は待ち時間があった。

バスは一度休憩した後、全州市外ターミナルには12時前に着いた。
ターミナルの裏側は殆ど旅館とモテル街になっている。昨年はターミナル正面のムンファサウナ旅館だったが、今回は高速ターミナル横のペッニョン荘旅館へ行こうと思っている。
ミニストップ横の階段を上ると、小さい窓口があって中にアジュマがいた。部屋はあると言う。2万Wだ。部屋を見せてもらうとオンドルが効いていて暖かいし大丈夫だった。それで2泊しようと代金を払った。
荷物を部屋に置いてすぐ出かける用意をした。
アジュマにどこへ?と聞かれる。とっさに、豊南門(プンナンムン)と答えると、韓屋村へも行くといいよ、と言われた。
すぐ横がセブンイレブン、近い所に2軒もコンビニがある。
高速ターミナルの横を通って川沿いの道に出た。荷物がないので、いくらでも歩ける。市外ターミナルから八達路の交差点まで行って八達路より西の広い通りを南へ向って歩いて行った。この通りは地元の人しか通らない道だ。
実は昨年、3日間滞在していたので歩き尽して、かなり勝手が分かるのだ。ロッテデパートからEマートの方も南へずっと歩いていた。
全州川の近くまで来ると客舎の方へ曲がる。左側にサムベッチプとサミルグァン、右側に中華街の入口がある。ここから中華街を通り南部市場の方へ歩いた。
南部市場は殆ど客がいない、みんな暇そうで旅行者の方を見る。買いそうでもないから、声もかからない。橋の上の露店も商品は少いし野菜が萎れている。そこから豊南門の方へ入って行く。
豊南門をくぐってみた。天井部には極彩色の丹青模様が描かれている。この門は朝鮮王朝時代の建築様式だ。全州のシンボル的存在なのだろう。

次に八達路を渡って殿洞聖堂へ。私は仏教徒だが、この教会の荘厳さも良い。癒される気持になれる。天井が高く非日常的な空間に感動するのだ。建築美もあってか人気のスポットのようである。
大勢の人が訪れていた。皆一様に写真を撮っているようだ。私も負けじと撮った。慶基殿前の道は混んでいた。土曜日なので観光客が多い。朝鮮王朝を開いた李・成桂の肖像を見ようと慶基殿へ入った。中央に李・成桂、両側に歴代国王の肖像がある。
香亭(ヒャンジョン)香具を入れて運ぶ輿、神輦(シンヨン)御真影・位牌を運ぶ輿、他に高官の移動に使う人力車なども展示してある。
すぐ前にある観光案内所で地図とパンフレットを貰う。日本語版はあまり減っていない。地図を片手に韓屋村を散策する。
路地の工事は完成していた。きれいに歩きやすくなっている。伝統家屋は修復したり改築したり絶えず続いているようだ。観光資源としての町並み保存に積極的だ。奈良の今井町もこれ位集客出来ればと思うのだが。
今日の予定はこれまでだ。八達路へ出てバスに乗る。高速ターミナル方面は分からないので、適当に北へ向かって走っているのに乗った。
ビール『hite』の看板が目印だ。これが見えたら降りればターミナル方面への入口である。

道路が混んでいてバスも渋滞が続いた。未だ食欲があまりない状態が続いている。
宿まで帰り、ミニストップでパンとヨーグルト、コーラ、栄養ドリンク等を買った。階段を上ると、途中のシャッターが閉まっていて入れない。こんな事は初めてだ。どう考えても記憶にない。
アジュマが買い物なのか。それにしても客の来そうな時間だと思うのだが。階段に紙を敷いて座って待った。
何人かが来ては返って行った。寒い、何十分待っただろうか。アジュマが帰って来た。申し訳なさそうに何度もミヤネヨ、アジョッシ、ミヤネと謝った。体調不良と疲れで早くゆっくりしたかった。それと、ここに着いた時段差に気づかずうっかり足を引っ掛け、ちょっと痛いのだ。
全州は食の宝庫と言われている。だが今日は何にもその恩恵に与っていない。オンドルは暖かかった。TVを見ながら眠ってしまいそうになった。


19  全州コンナムルクッパッとピビンパッの店へ

朝7時に起きた。足首は痛くなっていなかった。スキーに行った時のような捻挫なら、もうリタイアなのかとも思っていたが大丈夫のようだ。
きむたくとさんまのTVドラマを見ていた。ファンジニもあった。
10時過ぎまで部屋に居た。アジュマに出かけると言うと、また、オディエヨ?と言う。何か家族のような会話だ。これまでの旅館とか食道のアジュマとはだいぶ雰囲気が違っていた。人懐っこくてとても感じが良い人だ。コンナムルクッパッとピビンパッを食べに行くと言って出た。

バスターミナルの前の道まで行って、バス停で八達路方面のバスを調べてみた。どうも5-1がそうみたいだ。ただ時刻表はなくいつ来るかは分からない。しばらく待ってみた。大通りまで行けばいくらでも走っているのだが、今日はここからバスに乗りたかった。

客舎(ケッサ)の近くで降りようと思っていたのに、ちょっと乗り過ごしてしまった。
降りた後、客舎まで歩いて引き返す。日差しが暖かいので客舎には何人か板間に座っていた。私もこの歴史的建造物に腰を下ろす。
いい雰囲気だし暖かい。このままコーヒーでも飲んでゆっくりしたい気分だ。しばらく居てから少し歩いて右の道へ入る。コンナムルクッパッの店が2軒並んでいる。昨年はサムベッチプへ行ったから、今回はサミルグァンに行った。
雰囲気も店づくりも似ている。客はかなり居た。注文すると、すぐバンチャンが運ばれてきて、後で鍋が来た。赤くてちょっと辛い。アミの塩辛で味を整えて、海苔を揉んで振りかける。
ご飯は少なめだ。全州のクッパッはもやしに特徴がある。自家製で自慢の逸品だとうたっている。
途中で目玉焼きが来た。ちょっと遅かったかな。食欲がない時でも美味しく簡単に食べられる食事だと思う。
4000W払った。2軒共に24時間営業となっている。

道路を横切って中華街方面へ歩いた。今日は韓屋マウルでゆっくりしようと思っている。
韓屋マウルは慶基殿の前を通る道路を中心に左右に伝統家屋が広がっている。北側はすっかり観光化されているが、南側は奥の方へ入ると未だ古い家屋も残っている。

悟木台(オモッテ)の下にある案内所に入って、疑問に思っていた事を聞いてみた。それは韓国の伝統家屋の扉が、木の枠で紙貼りなのが気になっていたのだ。
雨が吹き込んだり、冬は寒いのではないかと心配だった。すると、紙は何工程も経た丈夫な紙である事、ひさしが長く雨は入らない事、紙だと室内が明るく、また湿度も調節してくれる。寒さについてはオンドルなので大丈夫、と、このような説明をしてくれた。
十分は納得できないが、台風も少ないし、それなりに大丈夫みたいだ。先日、河回村の藁屋根に泊まった時も厚い土壁で窓は小さくオンドルだったので、確かに寒くはなかった。先人の知恵が生かされているから心配はないのだろう。
今日は日曜日だから観光客は多い。

北側へ歩き韓屋村を通り抜けた。その後、客舎の横のアーケード街をぶらぶら歩きしながら、コサドン映画通りへ行ってみた。この近辺には映画館が何軒も集まっている。全州では映画の撮影も多いようだ。通りの入口に手形があった。いかにも映画の町と言う雰囲気がする。全州は国際映画祭が開かれる所としても有名な町である。

夕食はピビンパッを予定していた。前回が盛味堂だったから、今回は家族会館へ行こうと思っている。ところが場所を忘れてしまった。今日はガイドブックを持ち歩いてないのだ。
観光案内地図には入っていない。記憶をたどって歩いてみたが、やっぱり見つからない。結局、聞いてみる事にした。すると教えてくれた方は、親切にも地図にマークを付けてくれた。郵便局の近くとは知っていたけど、客舎のすぐ近くの、南側だとは忘れていた。ウェディング通り、郵便局の斜め前の角にある。

バンチャンは14種類。しばらくして真鍮の器に入ったピビンパッが運ばれてきた。混ぜようと器に触れると熱かった。え、こんな温度だったかな。盛味堂と比較してしまう。盛りつけはきれいだ。底にご飯がくっついて混ぜ難いがしっかりと混ぜた。ちょっと辛く感じる。
と言うか、体調不良なので、美味しく食べられない。キンパッ天国のでも、今日だとあまり変わらない気もする。バンチャンは全部、少しづつ食べてみた。春雨サラダと大学芋、これが美味しかった。








従業員は多いし、器も山積みしてあるが客は少ない。この広い店内に3組しかいない。正月明けだからなのかも知れない。不況も関係あるかも知れない。ピビンパッは今では庶民的な食べ物だと思っているので1万Wは高い。

店を出ると薄暗くなっていた。そのままバス停へ行って路線図を見てみる。乗って来たルートの逆向きは5-2だった。市外バスターミナル前で降りる。今日はさすがにアジュマは居た。

全州にはマッコッリタウンが何ヶ所かある。私は酒はあまり強くない方なのだが、どうもマッコッリには興味がある。でも今回はよそう。次に来た時に何ヶ所か訪ねよう。









ソウルから全州までに一度休憩が入る。その高速道路のSA。日本と殆ど同じつくりになっている。



全州・南部市場。ソルラル明けでちょっと活気に欠けるようだ。


殿洞聖堂。宗教以外でもその美しさに魅せられてやってくるようだ。

李・成桂の肖像を飾るために建てられた慶基殿。中庭も広い。

韓屋村の通り。昨年は工事中だったが、きれいな石畳に舗装されている。


コンナムルクッパの店が2軒並んでいる。どちらも老舗で競っているようだ。







全州のアーケード街、休日は賑わっている。この道から分岐した路地にもたくさん店がある。







コサドン通りにある映画館。この辺り一帯には映画館が多い。




家族会館の店内。右側の奥にビビンパッの器が高く積まれている。左側がレジと出入り口。






                       TOPへ  戻る  次へ