メ コ ン の 流 れ と と も に    14
パクセーは深い山の中
ラオス 4   1月29日 (日)
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1.薄暗い原っぱで起こされる

バスの車内は消灯されていた。薄暗い中で「パークセー、パークセー・・・」、と叫び続ける声が辺りに響く。バスの外を見渡しても薄暗い。ぼんやりしていた。皆一様に寝ぼけまなこで、一向に起き出そうとしない。
すると急に横のドアが開けられた。また「パークセー、パークセー・・・」、今度は首を突っ込んできて叫ぶ。
しばらくして、徐々に周りが騒がしくなってきた。隣に寝ていたおじさんはもういなかった。欧米系のバックパッカー達が身支度を始める。私も慌てて外に出た。見渡すと深い山の中だ。辺りはまだ薄暗く、秘境に迷い込んだ感じがした。
竹槍を持った男でも出てきそうな雰囲気だ。
広い荒地の中にソンテウとトゥクトゥクが何台か止まっていて、バスの荷物を出しているようだ。地図上では分かっていたが、この景色を目の当たりにしてかなり驚いた。何か探検にでも来たような錯覚さえ覚えた。さすがにラオスの山の中の町だ。
トイレ近くの隅の方で洗面をしている人がいる。バックパッカー達は行動が速い。もうどこかへ行ってしまった。パクセーはメコン川やワット・プー遺跡観光の入り口の町だ。もう南行きのバスターミナルにでも行ったのだろう。

トゥクトゥクとかモータサイのおじさんに声をかけられたが、私はこんな時間にどこへも行けないのだ。しばらくベンチに座って、貰ったクッキーを食べ豆乳を飲んだ。6時30分、辺りはまだ殆ど動きがない。やっと、この場所がセーンチャルーン・バスターミナルと分かった。そしてガイドブックの地図でも確認できた。
少しずつ明るくなってバイクが走るようになってきた。すぐ前の道路は幹線の国道13号線だ。この時間ではまだ宿には行けないし、荷物があるからそう歩き回る訳にもいかない。
午前中どう過ごすか地図を見ながら考えた。先ず最初は、メコン川を見に行く事にしよう。



2.ラオス・日本大橋、メコン川の上に立つ

バスターミナルを出て13号線を歩き始めると、モータサイやトゥクトゥクから、やたらと声をかけられるが、NO!と言うか首を振ればすぐ去って行く。しばらく歩くと何人かの托鉢僧を見かけた。ルアンパバーン程の規模ではないにしろ、ラオスで初めての托鉢風景だ。
スタジアムの所を左に曲がると、すぐ右側の白い建物の奥に大きなタラート・ダオフアンが見え、それからしばらく行くとラオス・日本大橋に出た。
車道が2車線と横に歩道が付いている。でかいと感じる程の橋ではないが、それでも1380mもある。歩道を歩き橋の上からメコン川を眺めた。雄大な流れだ。視界に入るほぼ全てがメコン川の流れだった。日本にもこの位の長さの橋はたくさんあるが、両端まできっちり水面になっている川は少ないだろう。漁をしているのか、小舟が数隻見えるがまるで小さい。
それ程この流れは途方もなく広いのだ。
私はビエンチャンからパクセーへとラオスのメコン川を眺めたが、次にこの川に出会うのはベトナムだ。
しばらく佇み、この橋を後にして今度はダオフアン市場へ行ってみた。

道路側は白い建物で囲まれている。そこにかわいい窓がついて何ともおしゃれな造りだ。
中の建物には衣類や貴金属・アクセサリーの店がぎっしり並んでいる。そしてその横にはフードコートがあった。圧倒される広さだ。横長のテーブルがずらっと奥まで何列も並んでいる。ただピーク時間は過ぎたようで客はまばらだ。
入り口を入るとすぐ、小学生程の男の子が、「何を食べる?」みたいに話しかけてきた。お母さんはすぐ近くにある調理場の一角で麺料理を作っていた。テーブルについて、「センレック!」と言うと、ラオ語でもないのに通じたようだ。テーブルの上には、ジャーに入ったお茶とコップが置いてあったので飲みながら待った。
しばらくして、センレックといろんな野菜が盛られた皿とザルがきた。尋ねると、「適当にちぎって麺の中に入れて食べるよう」、と言った。野菜らしき葉っぱは、木の葉のようなものまであって、香りは良いがごわごわしていて食べ難いのもあった。
お金を払う時、いくらか分からないので、適当に札から取ってもらった。そう、ラオスには紙幣しか無いのだ。
凄く安かったが美味しかった。市場の中の食堂は概してうまい。



3.またもや予約サイトの地図に悩まされる

タラートを出て国道13号線を歩いた。しばらくして革命記念塔などがある広場の横に出た。広い原っぱで入れるようにはなっているが、誰一人中にはいなかった。ちょっとだけ入ってみた。南の方角に三角形に尖った山が見えた。この山が何とも印象的で、この後もランドマークとして見る事になった。
チェックインは未だできないにしろ、荷物だけでも置こうとホテルに向かう事にした。予約サイトの地図では、この13号線のちょっと先にある交差点の近くだ。橋のたもとになっている。ところが、その場所には寺院が建っていて、辺りは雑木林しかない。またもや騙された。地図はどんな方法で決めているのだろう。世界的なサイトなのに何故この位の事ができないのだろうか。
こうなるとまたホテル探しをしないといけない。しかもこの近くにそれらしき建物はなさそうだ。まあ時間はたっぷりあるので、しばらくこのワットで休憩させてもらう事にした。
本殿に上がる階段に座っていると、トラックでやって来た人達が、寺院の修復なのか工事を始めた。そして小さな社務所のような所から若い僧侶がバイクに乗って出て行った。何とものどかだ。日差しは強くてとても暑いが、日陰では空気はカラッとしていて快適だ。しばらく辺りの景色を見ながら日記を書いた。
Meley2Hotel11時過ぎになり、ホテルを探す事にした。どこにあるのか全く見当もつかない。これはもう聞くしかない。でも、ラオ語の本など持っていないし、英語は通じない。交差点近くの店に入って聞いてみた。橋の反対側だと言われたが、その道沿いには見つからなかった。500m位行って右へ曲がり再び13号線へ出た。そこでまた聞いてみた。するとやはり方向的にはさっきの方みたいだ。また交差点まで戻りあちこち歩く。日差しが強く暑い。その後も何人かの人に尋ねた。その度に歩き、また引き返した。
そんな事を繰り返しながら、やっと見つける事ができた。予約サイトの地図より500m位離れていて、タラート・ダオフアンに通じる道沿いにあった。

今13時30分。もう2時間以上も歩き回った事になる。宿は若い男性がフロントにいて、PCでチェックするとすぐ部屋へ案内してくれた。1階でこのすぐ隣の部屋だった。エアコンとTVをつけてくれたので、しばらく休んだ。
思いがけない街歩きをした。おかげでこの辺りはすっかり覚えてしまった。右上の写真は、道端に置かれているラオスのゴミ入れ。殆どが黒くなってしまっていたが、こんなきれいな物をパクセーで発見した。

程なくして出かけた。No.13SouthRd とThanon21Rdの分岐点から西へ約1km位が、この街の繁華街らしい。確かに、カフェやレストランに雑貨店などが点在している。ただ交通量や人の往来は少ない。
先ほど13号線沿いはかなり歩いたので、13号線の北側を並行して走っているThanon21Rdを歩く事にした。この通りも所々に食堂などがあって、この街としては賑やかな方なのだろう。ただ家並みが続いているだけで人通りも少なく静かな雰囲気だ。市場のような喧騒は全くここにはない。
セードーン川まで来ると、車道が1車線で信号によって交互通行している橋があった。ガイドブックの地図では、この先が空港と北方面バスターミナルになっているが、こんな道路が空港とつながっているのだろうか。明日の、サワナケート行きのバスターミナルって本当にこちらなんだろうか。この橋を見て心配になった。
橋のたもとには、空港が近いためか派出所みたいなのがあって、中にお巡りさんがいた。
その左側には大きなワット・ルアンの塔がそびえている。地図にタラート・サオと言う市場があったので、セードーン川の沿って歩く。チッパソン・バスターミナルはあったが市場は見つからなかった。
今度はその先をメコン川に沿って歩いてみた。ちょっと寂れた感じで雰囲気が変わってきた。野良犬か飼い犬か、吠えながら近づいてきた。犬をつないでおく習慣など無いのかも知れない。これは危険だ。走って逃げた。


4.再びタラート・ダオフアンに戻る

その村を抜け出し大通りに出ると、タラート・ダオフアンがすぐ前に見える場所だった。少し歩き市場へ入った。こちら側から入ると、すぐ青果物の市場になっていて、広い吹き抜けの構内には野菜や果物が積み上げられていた。客は少なく、店のおばさん達が所々で井戸端会議中だ。その前には大きな傘のようなテントの店が出ている。自分の家の野菜をバイクに積んで持って来た、そんな風な露店もある。

歩き疲れた。犬に吠えられ走ったりもした。持っていたPETボトルの水は犬に投げつけたから無い。喉も乾き、市場の中のカフェに入った。アイスコーヒーを注文する。さすがにコーヒー専門店の味だし、氷がいっぱいで冷たくて美味しい。
この後チョッとフードコートの方も覗いてみたが、閑散としていた。この時間はどの店も営業していなかった。市場の方も今日はもう一段落したのだろうか。広場の露店では果物を見切って販売していた。

私は市場歩きがとても好きだ。その土地の産品がいっぱい並んでいるし、何たって大勢の人でごった返す喧騒がいい。
このタラート・ダオフアンはラオスでも最大の市場らしい。パクセーは交通の要衝でもあるし、周辺の農家から商品が集まるのだろう。それに広い地域からも買い出しにやって来るようだ。


市場を出て、すぐ前を通っている道から市街地へと戻る。13号線沿いの食堂を探す。珍しく白人が屋外のテーブルでビールを飲んでいた。私もパクセーのホテルが2泊取れていれば、明日はメコン川の滝でも見に行っているところだった。ビエンチャンではビア・ラオの工場にも行きたかった。
テーブルの周りに派手な椅子がいっぱい並んでいる食堂に入った。ちょっと道路から下がった所にある。入り口はなく自由にどこからでも入れる。もちろんエアコンなんかは無く、吹き抜けになっている。この辺りはこのスタイルの店が殆どだ。
メニュー表を頼むと写真入りのを持ってきてくれた。ラオスではウインナーがこわい。TVの旅番組で、ルアンンパバーン近くの食堂に入りウインナーを食べた時、現地の人がウインナーには牛の糞を入れてあるって言っていた。そしてそんな味がしたそうだ。
いろんな野菜や肉の入った焼きそば、それにスイカのジュースも注文した。
野菜か麺を仕入れに行ったのか、と思う位時間がかかった。それでも中学生位の女の子がやっているので、気にしないでいた。
出てきた料理は、インスタント麺のような食感だった。ただこんなのが返って高級だったりする。ラオスは殆ど輸入に頼っている筈だ。
味はタイ風で、チリソースの辛みがあった。

宿へ帰る途中、生菓子の店があり、客が何かをたくさん買っていた。美味しそうに見えたので私も買ってみた。
大きな交差点から北の方の道へ曲がり、セードーン川に架かる橋まで行った。ここから見る黄昏時の風景が何とも美しい。周りをぐるりと山に囲まれた地形と、何気ない素朴な風景に感動する。しばらく、懐かしく眺めていた。



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VIPバスターミナルに着いたビエンチャンからのバス。
早朝6時過ぎ、辺りは未だ薄暗い。

この何もない広場がセーンチャルーン・VIPバスターミナルだ。赤土の地面はでこぼこでゴミが散乱している。

[マウスで景観]ラオス・日本大橋。全長1380mのこの橋はメコン川の上を歩いて渡る事ができる。

竹箒みたいな物を売っている女性。近郊の村から出てきたようだ。

 [マウスで拡大] ダオフアン市場を歩くモン族の女性達。民族衣装である、腰巻の下部に付いた鮮やかな模様が印象的だ。

パクセーには、このような路地が多い。赤土の道路が奥へと続く。

市街地の中心ながら、このような静かな街並みだ。真昼は車やバイクの通行も少ない。

市場の隅で自家製の野菜を売っている女性。どの野菜も大きい。

この街ではきれいな食堂。吹き抜けでエアコンなどは無いが、写真入りのメニュー表があった。