メ コ ン の 流 れ と と も に 11 |
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1.ウドンタニー駅で寒さに震える 明け方になり、車内は更に寒くなった。これじゃダウンコートでも必要だ。まるで冷蔵庫の中。いったい何度に設定されているのだろうか。私だけではなく、皆が寒そうにブランケットにくるまっている。 うとうとしていると、辺りが少し騒がしくて目が覚めた。列車は停まっていた。慌てて、近くの人に「ウドンタニー?」って聞くと、そうだと言った。この駅で乗客は殆ど降りると思っていたのにそうでもないみたいだ。列車が発車しそうになり、周りの人達が騒いで止めてくれた。私は急いで網棚からリュックを降ろし列車から飛び降りた。 プラットホームへ出た頃には列車はかなり動いていた。慌てていてブランケットを持ったままだ。駅員に返すと、その人は最後尾の車掌に手渡した。一瞬の出来事だった。あのまま気が付かなければ、終点のノンカーイで目を覚ます事になる。 ![]() ![]() プラットホームの待合所はやたらと寒く震えた。駅には囲まれた空間がどこにもない。 とりあえず短パンを長ズボンに穿きかえなければ。都合よく、灯りのない所ではまだ暗闇なのだ。ちょっと奥まった場所へ移動して着替えを ![]() ![]() プラットホームの売店で何人かがコーヒーを飲んでいた。私もすぐ「ホットコーヒーを」、と言ったのだが、おばさんに「ポットのお湯がまだ沸いてないから、ちょっと待って」、と言われた。何かで暖を取らなければ。 しばらく駅の中をぶらぶら歩いていると、6時頃になり空がほんのりと明るくなってきた。トゥクトゥクのおじさん達は朝ご飯にでも帰ったのか、いなくなっていた。 駅前から真っ直ぐ伸びる大通りを歩く。少し行った所の右側には市場があるが、人の気配は全くない。椅子やテーブルだけがそのままに置かれている。しばらく行くと、歩道や店の前を掃除する人が何人かいた。明るくなるのは速い。オレンジ色の托鉢僧もちらほら見かけるようになった。まだそんな時間なんだと思った。 バスターミナルがどこにあるのかは知らなかった。大通りの左側と記憶している程度だ。しかしこの時間だ、そんなに早く見つけても仕方がないのだ。ぶらぶら散策でもしていればいいと思いながら歩く。 ![]() ![]() 中程の5番乗り場に『VIENTIANE』と書かれている。そこには白い机の前で、赤い帽子のおじさんが座っていた。時刻表を見たら全部タイ語なのだが、8時と、その次が10時30分のようだ。おじさんの机の上にも、08:00と書いた紙が立てかけてある。 このまますぐ出発するより、この町でちょっとゆっくりしたかった。机のおじさんに、「10時30分のチケットを」、と言ったらダメだと言われた。次の便の予約はできないって事か。しばらく考えてみたが、仕方なく8時の便に乗る事にした。 2.メコン川を渡りビエンチャンへ パスポートを出し手続きをする。ビエンチャンまで80バーツだ。預ける荷物は机の周りにまとめて置いてあるようだ。 切符を手にして、今度は食べ物屋台を探す。遠くへも出て行けないし、まだ開いている店も少ない時間だ。広いターミナルの周辺の一角にそれらしき店を見つけた。客がいて何かを食べている。座る場所も無いような狭い店だが、おばさんが片づけて座れるようにしてくれた。 ![]() ![]() 5番乗り場に戻ると、バスが到着していて、荷物を積み込んでいるところだ。慌てて荷物を持って行く。そして乗車する前にトイレを探すと、奥の方に見えた。やっぱり入り口に人がいて、3バーツとか書いてある。 バスの座席は最後列の窓側だった。乗客は多く、ほぼ満席だ。旅行者よりも地元民ぽい人が多い。 バスが走り出すと、ラオスの入出国カードが配られてきたので、すぐ記入しておいた。ノンカーイの方へ向かって走る。辺りはありふれた田園風景がずっと続く。 そしてメコン川に架けられた国境の橋に着いた。車窓から初めてメコン川を見る。1174mもの長い橋なのに、 ![]() ![]() タイの出国もラオスの入国もスムーズだった。誰かがつまずけばバスが遅れてしまうが、そんな事もなかった。 ラオスに入ると車の通行が右側に変わった。そして、やたらと韓国製の車が多くなった。それに、建物や道路や風景もかなり変化があった。道路は土埃が舞い、遠くに見える家も少し貧しい雰囲気がした。それでもこの道沿いにはいろんな店が並んでいる。 しばらく走り、少し建物が多くなってきたと思っていると、バスがたくさん停まっている、タラート・サオ・のバスターミナルに入って行った。首都の雰囲気がしない。高い建物もないし、鉄道もない。都会の喧騒もなく、静かな町だ。 3.驚きのうまさ、カオ・チー・サイ・クアン バスターミナルのクービエン通り側の一角には小さな市場があり、その前にはフランスパンとそのサンドイッチ(カオ・チー・サイ・クアン)の店がずらりと並んでいる。パンだけを何本も買っていく人と、その場でサンドイッチにしてもらう人とがい ![]() ![]() 山盛りのパンは美味しそうだ。でも私はまだラオスの通貨を持っていなかったのだ。 バスターミナルを出て銀行を探す。きれいに舗装された広い道路に、整然とした街並みが続いているが、日差しが強くてとても暑い。 ラーンサーン大通りを渡った所に、サヤーム銀行があった。1万円札を出して両替してほしい、と言ったら、バーツとドルしかできないと言われた。そこで、両替所の場所を尋ねると、タラート・サオのセンター内にあると教えてくれた。 再び、バスターミナルのすぐ隣にあるタラート・サオへ向かう。このセンターは新旧のビルが並んで建っているが、バスターミナル側の電気 ![]() 1万円札を出すと、1,009,700キープになった。ゼロを2つ取れば円に換算できそうな金額だ。ただ、TVで見たように、どっさり札束をくれると思って ![]() お金ができると少し気分が良くなる。すぐバスターミナルへ向かった。このバスターミナルは市街地の中心で、市場にも近く便利な場所にある。 中学生くらいに見える女の子2人がやっているパン屋を選んだ。山積みされたパンの前に立ち、さてどう注文したらいいのか、しばらく辺りの様子を見ていた。 客はそれぞれ具材を指さして選び、何やら分からぬ対話をしながら作ってもらっている。ペーストやソースや辛 ![]() 次に待合所の方に歩き、前の店でペプシコーラを買う。ゼロを2つ取ればいいのは分かるが、いくらで買えばいいのか物価が全く分からない。当然どの札を出せばいいか分からないのだ。すると店のおじさんが、ボトルに書かれている数字を指さして、これが値段だと言った。確かに5,000となっていた。変な端数はない、定価販売だ。でもこれが分かると高く売りつけられる心配がないので、良いかも知れない。 なぜこんなにも美味しいのか。パンそのものもうまいし、中の具材もソースも全てが美味しい。内面にはレバーペーストを塗っていたようだ。パクチーも入ったラオスのサンドイッチだ。すっかり満足した。吹き抜けの待合所はそれなりに涼しい。 お腹もおきて、早速、ゲストハウスへ向かう。 4.ビエンチャンの街歩き ラオス国立博物館の近く、サームセンタイ通りからサイゴン通りへ、少し入った所にあった。この宿も予約サイトの地図は間違っていたが、歩き方の地図を頼りに無事探し当てる事ができた。『G. Lovanh』では、パスポートと書類にサインだけのチェックインだった。 部屋は3階の307号室。床はピカピカ、部屋も広く、ベッドもクイーンサイズだ。カーテン越しに太陽が入っていた。ちょっとエアコンを動かしてみる。涼しい風が出てきた。 ![]() ![]() 先ずはメコン川を一度見ておこうと通りへ出た。初めてのビエンチャンは、何を見ても珍しい。車もバイクもそう多くないし、大きなビルも見当らない。所々にレストランやカフェがある位だ。ゆったりとした街歩きができそうだ。 サイゴン通り、フランゴギン通り、と川に向かって歩き土手に出た。すぐ前の川はメコン川の支流なので、そう雄大な流れではないが、遠くの方まで河原が広がっていた。あちこちで白人の人達がぶらぶら歩きを楽しんでいる。 夕陽を見にもう一度来よう、と思って街の中心地へ戻る事にした。通りをジグザグに歩き、ラーンサーン通りにある、ランドマーク的存在の『パトゥサイ』へと向かう。ビエンチャンの市街地には、これと言った観光スポットがないので、このパトゥサイはとても存在感がある。 ![]() 再びラーンサーン通りを少し戻り、インフォメーションを訪ねた。何か資料でも貰おうと思っていたのだが、ホテルのパンフレット以外、あまり用意さ ![]() 日本人だと言うと、「ちょっと待って」、と奥へ入り、日本人のスタッフの方を呼んできてくれた。私が気がかりなのは、明後日出かけるパクセーへのバスの事だ。そしてその乗り場の場所が知りたかった。タラート・サオのターミナルには、行き先別の時刻表が貼ってあって、その中にパクセーがあった。それを聞いてみると、「そんな筈はない、間違っているのだろう」と言われた。南方面はビエンチャン・バスターミナルから出発するそうだ。「そこまではトゥクトゥクかタラート・サオからのバスで行けばいい」、と教えてくれた。 ビエンチャン・バスターミナルが気になり、またまた、タラート・サオ・バスターミナルへ行ってみた。どのバスがビエンチャン・バスターミナルへ行くのだろう。何人もの人に聞いてみたが誰も答えてくれない。十分言葉が通じていないのだ。 構内を歩き続けるものだから目立ったようで、ある女性が職員の所へ行って尋ねてくれた。すると「29番バスが行く、30分毎に出ている。終点は南ターミナルだ」、とはっきり教えてくれた。これで一安心だ、再び街歩きへ出かけた。 5.メコンの夕陽にうっとり 夕方になって、メコン川へ向かった。夕陽を眺め、そしてカメラにも収めておきたい。 ワンウォン王像の辺りから西へと歩いた。河原では大勢の人が川岸を目指して歩いていたが、私はもうすっかり歩き疲れていて、あの距離を歩く気力をなくしていた。 ![]() ![]() 夕陽がメコン川に影を写しながらゆっくりと沈んでいく。この黄昏の情景は何とも言えない感動がある。映画でも見ているかのようでもあり、夢の中のようでもある。ここにいる人達もみんな同じ思いなのだろう。 夕陽を眺めて長い時間を過ごした。 通りへ出ようと歩いて行くと、明るいテント張りの露店が集まった場所があった。ナイトバザールって感じだ。それだけ夕陽を見ようと集まってくる人が多いのだろう。 街の通りはどこも薄暗く、店が営業している前だけが明るかった。その店も都会のような明るさではない。車の通行が多い賑やかな通りは少なく、全体にひっそりとした感じだ。路地に少しでも入れば街灯も無く暗い。 宿へ帰る途中で、食堂に入った。おかずがいろいろ並んでいて、指さしで注文した。味は穏やか、タイのように辛くなかった。その後、近くの店で水を買って宿へと帰った。 Topへ 前へ ◀ ▶ 次へ |
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