メ コ ン の 流 れ と と も に     34
クアラルンプール近郊の町へ
マレーシア Ⅱ 4   2月18日 (土)
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1.バトゥ・ケイブの階段を登る

宿を出たら雨が降っていた。すぐ傘を取りに引き返す。この時期のクアラルンプールは雨の日が多いようだ。夏の6,7月は殆ど降らなかったのだが。インビ駅まで歩いた。今日の自動券売機は札が使えた。ただ新しい金色の20SENは使えない。その様子を見ていた、女性の係員が近づいて来て説明を始めた。
現在はモノレールとLRTとバスの共通ICカードが発行されているようだ。何年か前の事だが、改札口にICのセンサーが付けられているのを見て、出札所のインド人女性に「ICカードをください」、と言ったら、無愛想に「そんなの無い」、と言われて、「そんな筈ないだろう、あそこにICカードをタッチする場所があるじゃないか」、と言ってかなり揉めた。あのICカードがやっと使えるようになったのだ。

モノレールでKLセントラルまで行った。KTMで1Dayチケットを買おうとしたら、無いと言われた。その制度も変わってしまったみたいだ。自動券売機にもWeeklyと言うボタンはあったが、OneDayは無かった。

今日はバトゥ・ケイブに行く予定をしている。KTMに1Dayチケットが無いのならプトLRTに乗ろう。ここからパサール・スニ駅まで行って、そこからバスで行けば良いと思った。ところが、KTMの電光掲示板に『BATU CAVES』、の文字が流れているのが見えた。何度も確認してみたが間違いなかった。と言う事はSentulから先が開通したのか。
そのBatuCaves駅からヒンドゥ教の聖地までは、どの位の距離があるか全く分からないが、これは便利になった。少々離れていても歩くのは得意だから大丈夫だ。

薄暗いプラットホームに下りると、人影もまばらで赤い光だけが眩しく輝いている。しばらくベンチに座って待った。壁の路線図にはSentulから先の表示は無かった。
青い電車が入線してきた。3両編成で、真ん中の車両に乗った。
地上に出て、しばらく移り変わる景色を眺めていた。雨が降っているようではない。
大きな岩山が近づいてきて、電車はBatuCaves駅に着いた。
プラットホームに下りて気が付いた。何と、真ん中の車両には『koc untuk wanita sahaja』(女性専用車)とピンクの表示があり、女性のイラストが描かれていたのだ。
日本とは違って痴漢対策ではなく、イスラムの男・女の区別と言ったところだとは思うが。それにしても、3輌しかないのに1輌を専用車輌にするとは。しかも女性はそんなのには全くお構いなしで、3輌とも平均して乗っているのだ。
乗る時は薄暗くて気が付かなかった。以前はこんな車輛は無かった。


駅を出るとすぐ門前町の風情だ。飲み物を売る露店に、占いのおじさん、宗教道具の店。
鉄格子を出ると、すぐ前に金色の巨大な像が見えた。その階段下までは、駅から歩いて5分程度、数百メートルの距離だった。

272段の階段はかなり急だ。振り返ると足元がすくむ。上を見ても下を見てもぞくぞくする。猿は欄干から手摺へと、平気であちこち飛び回るのだが、落っこちないのが不思議だ。「猿と言えども気をつけろよ!」、と言いたくなる。私は手摺をしっかり掴んで、少しづつしか進めない。
金毘羅本宮の785段とまではいかないが、この真っ直ぐの急傾斜は恐い。誰かが足を滑らせたら、大勢の人が下まで落ちてしまいそうだ。そんな心配をしながら登っている私のすぐ横を、頭にお供え物の牛乳を載せて、早足で登るく信者が通り過ぎた。観光客とは違って彼らは真剣な面持ちだ。


石段を登り切って、少し向こう側へ下った所に本殿があった。RM3と書いてあったので、この洞窟の入場料かと思ったが、お祈りのためのようだった。
そこから再び石段を少し登ると洞窟は終わっていた。周囲の壁面には様々な神の像が立っている。神話風に、何かを表現する像もあった。スポットライトが当てられて宗教的におごそかな雰囲気がする。ただ、我々観光客は、仏像や神々を美術的な視点で見てしまうが、あくまでもここは神聖な場所だ。ヒンドゥ教の人達には特別な思いでやって来る聖地なのだ。
本殿近くは牛乳が腐っているのだろうか、チョッと臭かった。溝にはお供えの牛乳が流されたようで、白くなってそこが匂っていた。牛乳は祭壇にそのまま祀っておくのではなく、何かにバシャバシャかけているようだ。そしてこの洞窟の中にも売店があってボトルに入った牛乳が売られていた。
何故、牛乳なのか考えてみた。『神聖なる牛』、から牛乳も神聖なものと言う事なのだろうか。
何とこの売店にはポストカードやキーホルダー等のおみやげまで売っているのだ。こんな神聖な場所でだ。

そして再び手摺を掴みながら階段を下りた。今度は鉄パイプではなく、石の手摺になっている。なるべく景色を見ないで、ただ足元だけを見ながら歩いた。
下に着いてホッとしたら急にお腹が空いてきた。よく考えるとまだ朝ご飯を食べていなかったのだ。道理で足元がしっかりしなかった。
露店には甘そうなインドのお菓子がいっぱい並んでいる。油っこそうだが、どれか食べてみたかった。ところが蠅が何匹か集っていたのだ。これはダメだ。タイではカットフルーツに小さな蜂がいっぱい集っているのをよく見かけたが、あまり汚くは感じなかった。


駅へ向かう道端には、占い師のような人が客の手を握って何か説いていた。仏具の数珠や女性用の飾り、金色のブレスレットのようなものも売られていた。


2.ポート・クランは景観が変わっていた

駅に着くとクラン行きの電車が止まっていた。電光掲示板を見ると30分毎になっていて、まだ20分あった。前の店まで戻り飲み物を買った。
右の自動券売機は10sen硬貨のみで、左のが英語とマレー語の選択ができ紙幣も使えた。
ポート・クランまでの切符を買った。RM5.20だ。
KTMの自動券売機は旧式だ。全ての駅名がずらりと並んでいて、その中から目的地のボタンを押す。次にシングル(ワンウェイ)を押すと液晶に金額が表示されるから、硬貨とか札を入れる。お釣りは出てくるが、硬貨しか使えないのも多く、そんな時は窓口で買う。
出口でも改札機が作動しない場合も多く、切符をそこに置いて出る。かなりいい加減だ。
赤い電光掲示板には次の電車の行き先と時刻が出るのだが、前の電車が遅れていたりすると、その表示時刻より早く出てしまうのだ。
モノレールの方はKTMより何かとスマートだ。切符も液晶のタッチパネルで買うようになっている。ただこれも数年前には、全て窓口での販売だった。

ポート・クランまでは1時間40分位かかった。電車のレールはここまでだが、貨物の引き込み線が少し向こうまで延びている。
駅を出るとすぐ桟橋があり、ずっと先の方にKUTAM行きの高速船と連絡船の乗り場がある。天気が悪く、曇っているから海の色も向いの島の色も冴えない。しかも右側に新しい桟橋ができていて、海側に長く突き出している。これで景観は一気に悪くなる。
向かいの島も開発されて建物が増えたようだ。どうも期待外れだ。以前はもっと風情があったのだが。ターミナルが分離されて賑わいも無くなり、閑散としている。少しばかりの客が高速船の方へ歩いて行った。
隣の新しいターミナルへ行ってみた。旅客の待合室の方へは入れない。ガードマンがいっぱいで入れてくれない。ここからはインドネシアへの国際航路がある。パスポートとビザが必要なのだ。

海側にレストランと書かれたフードコートがあった。こじんまりとした食堂だ。やっとここで食事タイムになった。
カウンターの女性にご飯を入れてもらい、並んでいるおかずを次々に指さしていった。それが多過ぎたのか女の子が笑い出した。最後に目玉焼きを載せて完成。こんな食事が旅先では一番良い。地元の人がやって来て、ご飯の上に小魚を2匹だけ載せてもらっていた。
飲み物に豆乳の缶入りを指さすと、グラスに氷を入れてくれた。安い、計算機の表示を見せた。
海側に向いた席へ運んで食べた。
揚げ豆腐、卵を黒くなるまで煮たもの、レバーたっぷりの煮物、カリフラワーなどの炒め物、など。ご飯はパサパサだがなかなか美味しい。しばらく港を見ながら休憩した。
小さい子供が無理を言って泣きわめき出した。母親は困っているが怒らない。前にいる父親もそれを無視して食事をしている。
ホーチミンからの機内でも同じようだったが、何故そのままなのか。周りへの迷惑もあるだろうと思うのに。
いつまでも泣き止まないので、私が外に出た。右に荒地の広場があったので、そこで海の写真を撮った。
以前、マラッカ海峡はよく海賊が出没していた。どの人達なのだろうか、と辺りの人を見たものだ。今はソマリア沖が有名になったので、聞かなくなってしまった。


3.クラン市街を散策する

再びKTMコミューターに乗り、今度はクランへ向かった。さすがKTM、RM1だ、安い。
クラン駅に到着し、右側へ歩いて行くと、マラッカの旧市街のような雰囲気の街並みが広がっていた。両側にかなり古く風情のある建物が並んだ通りがあった。観光名所にも負けないような建物群だ。
車道と歩道が別々になっている大きな橋を渡った。すぐ先には小さな公園があり、その周囲がローカルのバスターミナルだ。
スーパーマーケットがあり、入ってみた。入り口には飲料のボトルが積み上げてあって、アイスのケースが置いてある。田舎風の小さな店だ。大きなショッピングセンターはこの西側にあるようだ。
橋へ戻った。クラン川のすぐ傍には、大きな金色のドームのモスクが建っている。モスクはそれだけではなく、あちこちどの方向にも見える。
橋の歩道部分は上下2段になっていた。橋を渡った場所から高台の方へ、そして市街地の縁を回るように歩いてみた。
ヒンドゥ教寺院の真向かいにイスラムのモスクがあり、そのすぐ近くにキリスト教の教会があった。誰がやって来ても対応できそうな場所だ。日本人のように、神社をお参りして、すぐ近くのお寺にもお参りする、と言うような事はないと思うが。
駅の方へ向かって歩いて行くと商店街へ出た。橋の北側が新市街で、こちらが旧市街のような街並みだ。
商店街と言ってもそう人通りが多い訳でもなく、静かな佇まいだ。宗教儀式用の物にお供えの飾り、衣類の店、食堂などが目に付いた。
行列ができている店はと、よく見ると『SportsTOTO』、だ。やはりギャンブルに人気があるようだ。



4.ミッドバレーからチャイナタウンへ

街を散策しながら駅まで戻り、切符を買おうと自販機に行ったら、硬貨しか使えない。仕方なく窓口でミッド・バレーまで買った。
プラットホームへ出ようとした時、ちょうど上りの電車が出たところだ。

次の電車はなかなか来ない。かつてのKTMとはだいぶ様子が違う。運転間隔も、女性専用車も、運行状況も。この駅でもかなり待たされた。すでに電光掲示板の時刻表は関係なくなってしまっている。
下りは何本か来たが、上りが全く来ないのだ。結局1時間近く待った。やっと来た電車はそれほど混雑はしてなかった。日本だとこれだけ遅れれば満員になってしまいそうだが、それが不思議だ。

ミッド・バレー駅で降り、連絡橋を歩いてメガモールへ入った。
このショッピングセンターの集客は凄い。土曜日と言う事もあるのだろうが、かなり賑わっている。中心市街地にあれだけたくさん巨大なモールができているのに、あまり影響なさそうだ。駐車場の力かも知れない。

ジャスコ、ユニクロ、イオンのヘルシー&ビューティー店。日本の企業も出店はしているが、この広さからすれば、ほんの一部に過ぎない。
フードコートは2階の中央付近にあった。ここでは以前食事していたら、隣に座った男の子が手で掴んで食べるのを初めて見た所だ。それも器用にパサパサのご飯を指先で固め、カレーをほんの少しだけ付けて食べていた。
ぐるり歩いて中華メニューの店に行った。メニューボードの写真から選び、英語読みで注文すると、黒いトゥドゥンを被った女の子が笑いながら「ここで食べますか?」、と言った。

しばらく待って出てきたのは、中華丼のような料理だった。スプーンやフォークを置いてある場所が随分と離れている。教えてもらったが、店の裏側になっていて見えなかった。
味は穏やかで、具も多いしスープもたっぷりでとても美味しい。食後はデザートの店へ行って『ロンガン・アイス』、を注文した。ロンガンやナタデココやゼリーがいっぱい、それに氷をかけてあった。こちらもなかなかうまい。

カルフールに入ってみた。商品アイテム数はそう多くないが、通路が広くゆったりとしている。美味しそうなパンと飲み物を買った。実はバクテーの調味料を探していたのだが、ここには辛そうなペーストだけしか無かった。


帰りには、駅への通路が分からずチョッと迷ってしまった。北側のGか1Fか、適当に出たら下過ぎた。
この駅は自動で通れなくて、駅員に切符を見せた。下りたプラットホームがスレンバン方面で、慌てて1,2番線のラワン側に移動した。薄暗いプラットホームで大勢の人が電車を待っていた。

クアラルンプール駅まで乗った。KLセントラルだと、あの埃の通路を歩くようになるので、どうも足が向かない。一番北側の階段を上った。大通りを渡り、プトラのパサール・スニ駅までの歩道橋があるのだが、何故か今日は閉鎖されている。仕方なく大通りを横切ってチェン・ロック通りまで歩いた。
ントラル・マーケットのすぐ横のアーケード街には露店が並び、買い物客もチラホラいるようだ。中華街では一番賑わうペタリン通りは、入り口から混んでいるのが分かる。今が21時35分、まだまだ終わらないだろう。
ジャラン・プドゥへ出てたが、プドゥラヤ・バスターミナル辺りまで来ると人影はまばらだ。
私が以前泊まっていた『KatariHotel』、はここに建っている『CitinHotel』に名前が変わったのか、その横の更地になっている場所だったのか、変に懐かしい。
長らく一階部分だけのコンクリートの塊であったビルも、やっと工事が始まったようだ。バスターミナルのすぐ横だし、プトラの駅にも直結している。こんな場所を何故放置しておくのか不思議だった。
ここからプドゥ通りをブキッ・ビンタンまで歩き、宿へ帰った。



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象徴的なヒンドゥのムルガ神の巨大な像。

牛乳を頭に乗せ参拝に行く信者。かなり急な272段を登るのはきつい。

ヒンドゥの神にお祈りをする信者たち。ここで牛乳をお供えする。

洞窟の中には様々な神の像が配置されている。

KTMコミューターは2路線だが、イポーまで電化されたのか、イポー行きの電車が走っていた。

ポート・クランからはクタム島への高速船が出ている。

クラン港のターミナルビル1階にあるフードコート。

新しい桟橋ができて様子が変わってしまったP.Klangの景観。

『クラン』の駅前にあった案内板。

クランには、マラッカの旧市街を思い出すような、街並みが広がっている。

クランの市街地にある、SportsTOTOに並ぶ人達。

ミッドバレーのメガモール。カルフールやジャスコが入居している。東南アジア最大級のショッピングセンターだ。

KLタワーとペトロナス・ツインタワー2棟の角度で、現在地を知る事ができる。