メ コ ン の 流 れ と と も に 22 | |
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1.極上のヌックマムを求めて 朝食のため2階へ下りた。広いレストランにはテーブルがたくさん並んでいる。客は数組しかいない。メニュー表を持って女の子がやってきた。チケットを渡し注文をした。周りに植え込まれた植物、窓から入ってくるそよ風、辺りはとても南国らしい雰囲気を演出している。そして、甘く情熱的な歌声が流れていた。♪♪ Neunhu ngay do ta khong gap nhau thi chac nay da khong us ![]() ![]() 近くの席までコーヒーを運んできた女の子に、歌手の名前を聞くと、何とか言った。すぐペンを出して紙を取ると 『Le Quyen』 と書いてくれた。 大通りへ出てバスを待つ。すぐ赤いバスはやってきた。12,000ドンを払って、『スイティエン』の辺りと言っておいた。全速で走っていたバスはムイネーの海岸通りに入ると少しスピードを落とした。 車掌が合図してバスを止めてくれ、「ここだから降りるように」、と言った。そして向こうを指さして入り口を教えてくれた。昨日のシンカフェよりはかなり先の方へ進んでいた。 ![]() ![]() 買うのは帰る時だけど、しばらくヌックマムのボトルが並んだ店を見ながら歩いてみた。 実は、スイティエンの入り口近くから、あの独特の匂いが漂っていたのだ。そして『PHUONG LOAN』の店の辺りまで来ると、向かい側の奥に甕がいっぱい並んでいるのが見えた。店の作業場と塀の間の通路、砂の道を歩いて甕の方へ行ってみる。入り口は開いているものの、金網の柵がある。奥には何百もの甕がびっしりと並べられていた。その中でノンラー(編み笠)を被った女性が黙々と一人で汲み出しの作業をしていた。甕の蓋も水色のノンラーのような形をしている。 ![]() ![]() 先ず、カー・コムに塩を加えて数か月熟成する。そして自然にできた上澄み液(ヌック・マム・ニー)を、甕から全部汲みあげて、再び元の甕に戻す。こんな作業を一日6回、2日間繰り返す。これをヌック・マム・コットと言い、魚の旨み成分が凝縮された、コハク色の透明な液体となるのだ。 あの女性はまさにこの汲みだし作業をやっている最中だ。今はのんびりと作業をしているが、カー・コムの水揚げが多い8月、9月は朝から晩まで大忙しになるみたいだ。 この辺りの乾燥した気候と、南シナ海に面した魚の豊富な漁場とが、上質なヌックマムを造り上げてきた所以なのだろう。 ![]() ![]() 『PHUONG LOAN』の店頭では男性がボトル詰めの作業中だ。水色の大きなタンクの下には蛇口が付いている。地面に座り込んで1リットル程のPETボトルに小分けしていた。 この店は何度もTVで見た。と言うか、なぜかここしか出てこない。そんなに有名店なのだろうか。主人は職人気質で、自分の目の届く範囲にしか出荷しないのだとか。大きなボトルや箱に入った物までいろんな種類がある。みやげやギフトの需要も多いのだろう。それに日本の醤油以上に消費量が多そうだ。ベトナム料理はヌックマム抜きでは語れない。 同じファンティエットでも、市街地に近い方には大規模な工場が何カ所もあり、一方でこのムイネーは、昔 ![]() ![]() 太った魚とやせた魚とでは加える塩の量が違う、これを間違えるとしょっぱくなってしまうのだそうだ。 《とよた真帆のアジアグルメナビ》でも、この『PHUONG LOAN』の取材だったが、なぜかどの番組もレストランは決まって『カイバン』になっている。 そしてここには一番搾りと言う極上なヌックマムがあるのだ。 あちこちヌックマムの店を見て歩いたが、今は買えない。この通りを後にし、スイティエンの入り口へ戻った。 2.スイティエン(妖精の渓流)のトレッキング 入り口は小さな橋(ラン橋)のたもとにある。《SuoiTien FairyStream》と書かれた目印となる看板があり、ちょっとした説明もついている。橋の下には赤く濁った小川が流れていた。これを見れば誰も入り口を間違う事はないだろう。 ![]() ![]() 靴を脱いで赤い水に入ってみた。思った以上に冷たい。水深はほんの10cm位、ちょうど踝のあたりまでの深さだ。裸足で川に入るのなんて何年ぶりだろう。 水は赤く濁っているが、赤い砂が溶け込んでいるだけで汚れている訳ではない。暑い日差しの中、冷たい水が何とも心地よい。 すぐ前を白人の男女が、靴を手に持って歩いて行く。 くねくねとした川の流れに沿って私も歩いて行く。ずっと同じ深さのままだ。踏みしめる砂の感触が足から伝わってくる。 途中に、崖の上から砂が崩れ落ちたような場所があった。川から離れ、裸足のままで砂に足をとられながら上へと登る。何人かのグループも同じように登って、上に辿りついていた。崖の上は一面の赤い砂漠だった。日差しは強く、砂も熱い。ベトナムにやって来て、こんな砂 ![]() ![]() しばらくこの絶景を眺め、再び川へ下りて行った。ツアー客か家族旅行なのか、何人かのグループが少しづつ間隔をおいてやって来る。この先の、どこまで続いているのか私は知らないで歩いている。 川幅が少し狭くなった場所に来ると、20cm位の深さになったりもする。池のようになった深い所もあり、そこでは膝まで浸かってしまった。 やっとこの川の源に着いた。落差数メートルの滝になっていた。ここでトレッキングは一旦、終了となる。ただ途中で引き返す人達も多いようで、ここでは白人二人しか見かけなかった。 ここまでやって来ると冒険心に火がついてしまう。インディー・ジョーンズにでもなった気分だ。滝の近くにある崖を一気に登った。この上は砂漠ではなくトゲのついた灌木やサボテンが生えていた。靴を履いてあちこち歩いて行くと、木が少なくなりまた赤い砂漠 ![]() ![]() ここからでも椰子の通りまで歩いて行けそうに思ったが、川を歩く方が楽しいので、崖を下りて水の所まで戻った。 この川の東側に2、3カ所、カフェがあった。川の傍に案内が出ていて、階段を上った所に、みやげ物も売っている店があったようだ。 バス通りの小さな橋が見えて、スイティエンのトレッキングは終わった。 3.椰子の村とムイネー海岸 椰子林の続くこのグエンディンチェウ通りから、草むらの中を歩いて海岸へ出てみた。 そこには、白砂の海岸とそそり立つ椰子の木が延々と続いていた。海には漁をする小さな舟が何艘か出ている。この辺りはリゾートホテル ![]() ![]() 海岸には竹で編んだ丸い舟や、エビとかカニの仕掛けのような器具が無造作に置かれていた。この丸い舟、ベトナムでは時々見かけるが初めて樹脂製のを見た。樹脂でコーティングしてあるのかも知れないが意外だった。 漁船から海岸まで、魚の運搬に使われているようなのだが、こんな形では操縦が難しそうだ。水の浸入を防ぐため竹の間には牛の糞を塗りつけてある、とTV番組で見た。カー・コム漁の最盛期には忙しそうに船の間を往復していた。 海岸に沿って西の方へ歩いてみた。椰子の林の中にはバンガロー風の建物が並ぶ。ここムイネーのリゾートにはニャチャンなどと違って ![]() ![]() それにしてもこの海へせり出すように生えた椰子の木、大きな椰子の実がいっぱい生っていてちょっと危険だ。頭を直撃されたら堪らない。 砂浜の端にあるコンクリートブロックに腰掛けて、しばらく波の音を聞いていた。日差しは強いが、木陰を通り抜ける風はとても爽やかだ。 時計を見ると12時になっていた。通りへ戻り、シン・カフェの方へ向かって歩く。あの辺りにはカフェや食堂があった。 2km位歩いて、シン・カフェの前にあるレストランと書かれた店に入った。ニャチャンからのバスの中で騒がしかった家族と白人女性の ![]() ![]() フォー・ボーとアイスミルクコーヒーを注文した。グラスいっぱいの氷に、中間までコーヒーが入っていた。ベトナムのコーヒーは濃いし甘いからすぐちょうど良くなるのだろう。 しばらくして出てきたフォーはチョッと薄味。なかなかこの味に慣れてこない。タイのように、調味料もたくさん置かれていない。ヌックマムを加えて食べた。 湿気が強く蒸し暑い日本の夏と比べると、日陰は涼しく、まるでハワイにでもいるようだ。 4.ムイネー村まで行ってみた バスでムイネー村へ、そしてムイネー市場へも行く事にした。 赤いバスに乗り、料金はいくらか分からないので、12,000ドン払って、「ムイネー市場近くで」、と言っておいた。椰子の林が切れて海がすぐ近くに見えるようになった。ムイネー村は漁村の筈だ。近くの海には大小の舟がいっぱいだ。 ![]() ![]() この市場の辺りが村の中心のようで、店がたくさんあり人通りも多い。 ”CHO MUI NE” この時間の市場内は閑散としていた。 売り場は片づけられ商品は殆どない。所々でおばさんが野菜を並べて商売をしている程度だ。それにしても辺りのゴミは凄い。入り口付近から構内まで、ゴミだらけだ。 今度は外に出て町を歩いてみた。このバス通りは海面よりかなり高い位置にあり、ここから見ると、たくさんの漁船は凄い迫力だ。 ![]() ![]() ヌックマム通りへ戻ろうとバス停をさがした。海岸通りと違ってバス停の間隔が狭くすぐ見つかった。 バス停に立っていると、バイクタクシーのおじさんが声をかけてきた。「スイティエンの辺りまでいくら?」と聞くと「トゥエンティ」、と言う。言い値じゃ面白くないから「15でどうか?」と言ったら、ダメだと言った。私にはどちらでもいいような金額なのだが、このおじさんはどうしても譲らない。そして向こうへ歩いて行ったかと思うと、年配のおじさんを連れて来て、「この人は15で行く」、と言った。プライドなのか、何か決められた基準でもあるのだろうか。 それでも自分がダメな時には他の人に仕事を譲ると言う、この精神は素晴らしい。結局、連れてきた15のおじさんに乗せてもらう事にした。 街を抜けて下り坂を進んでいると、急におじさんがバイクを止め、「このヘルメットを被るよう」、と渡してきた。随分慌てている様子だ。そして、その道路の先に見えたのは、警察の取り締まりだった。2台のバイクが捕まり道端に止められていた。間一髪の判断だったようだ。 ![]() ![]() 無事検問を通過し、椰子の下を軽快に走る。ヌックマム通りの『PHUONG LOAN』の前で降ろしてもらった。店頭に立つと店主が出てきた。何度もTVで見た顔だ。500mlより小さいサイズがないかと聞くと、ないと言われた。仕方なく1本買った。ここまでやって来て1本買う人も珍しいのだろう。ホントに1本?って顔だった。 実はLCCの預け入れ荷物は、エアアジアもジェットスターも15kgにしていたのだ。それで荷物の重量が増えないよう注意していた。 近くのバス停から、今度はバスに乗った。車掌に12,000ドン払うと1,000ドン戻してくれた。何とも分かり難いバス料金だ。 バスは椰子に囲まれ、緩やかに弧を描くような道を進む。シンカフェの付近から海岸沿いには、リゾート・ホテルが何キロもに渡って続いている。そしてその西の端には、みやげ物などの店がたくさん集まった場所があり、白人客で賑わっていた。 更にその向こうは椰子林が切れ断崖になっていて、道端にテーブルとイスが延々と並んだ全くのオープンカフェもある。最高に楽しめる夕陽のスポットではないだろうか。 5.ファンティエットへ戻りチェーの店へ ファンティエットの市街地に入り、降りる場所をさがしていたら鉄塔が見えた。急いで合図をし降ろしてもらう。ここがホテルに一番近いバス停だ。 チャンフンダオ通りとの交差点の方へ少し歩くと、昨日のチェーの店の斜め前に、もう一軒チェーの店がある ![]() ![]() チェーの具材を適当に指さした。白玉団子に芋に豆類だ。たっぷりのココナッツミルクがかかっているチェーが出てきた。冷たくて何とも美味しい。 交差点を左へ曲がり、COOPのショッピングセンターへ入る。2階には電気製品、日本のSANYO、TOSHIBA、MITSUBISHI等の冷蔵庫の大きな段ボール箱が積み上げられていた。3階のフードコートへ行った。何か変だ。おかずの並んだショーケースの前で、注文されたご飯を作っているのだが、客はみんなレシートと交換しているのだ。 並んでいる人に聞いてみると、向こうのレジで注文し支払いを済ませるらしい。そしてレシートと交換でご飯を貰うと言う事だ。 少し離れたレジでメニューを見ると、これが全部ベトナム語で書いてあり、全く分からない。今まで全て指さしで注文してたからびっくりだ。どう考えても無理だった。 フードコートの中はかなりのテーブルが埋まっているようだが、チョッと薄暗い感じだ。奥にあるトイレへ行くと、入り口で500ドンだと言われた。 ![]() ![]() 隣におじさんがやって来て、何やらスティロールに入ったお弁当らしき物を食べ始めた。すぐ後ろのファストフードと看板が出ている所で買ったようだ。COOPの店の入り口に近い場所にある店だ。 ちょっと覗いてみると、おかずがたくさん並んでいて、パンに挟んだりご飯にかけたりしてくれるようだ。そしてカットフルーツがパックに入って並べてあった。ザボン、スイカ、ドラゴンフルーツ、・・・。スイカが美味しそうだったので買ってみた。同じ場所まで戻り腰掛けて食べた。そう冷えてはいないものの甘くて美味しい。 近くに食堂がない訳ではないが、清潔そうな店が見当たらない。 ホテルの方へ戻っていると、昨日行ったチェーの店の近くにベーカリーがあった。中に入ると、右側はバイン・ミー・ティットのコーナーになっていて、具材のポットがいっぱい並んでいた。正面はケーキ類だが、暗い色合いのケーキばかりだ。左側は広いパン売り場になっていた。バイン・ミーの方は若い女性が数人いて、清潔そうだったので、具材を選んで注文する。フランスパンは半分くらいのサイズしかなく、2個作ってもらった。 部屋に帰り、冷蔵庫からセブンナップを出してバイン・ミー・ティットを食べた。 夜遅くの窓からは、人通りもなく、バイクさえも殆ど走っていない街並みが見える。蛍光ラインを付けた人が何人かで道路の掃除をしていた。騒がしかったこの辺りも、12時を過ぎる頃には静かな町となる。 Topへ 前へ ◀ ▶ 次へ |
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