メ コ ン の 流 れ と と も に 16 |
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1.ラオスからベトナムへ、歩いて国境を越える 周りが騒がしくなり、起きるよう号令の声が響いた。うとうとしていただけで、しっかり眠った訳ではない。飛び起き、慌ててメンバーの後を追った。外はまだ暗い、そしてとても寒かった。バスはどこにも見えない。右の方へ向かってぱらぱら歩く人がいるだけだった。この辺り ![]() 何の説明もないから前を歩く人について行くしかない。でもよく考えてみれば、夜行でしかもこんな貨物兼用バスに観光客が乗るのも稀だろう。殆ど説明など要らない地元の人達だ。 しばらく歩くと計量所がある場所に何台かバスが停まっていた。そこから更に行くとラオスのイミグレーションが見えてきた。 まだ薄暗い早朝の6時前だ。明るい蛍光灯の下で係官がすでにパスポートの処理をしていた。窓口の周辺には人だかりができている。 近くの人に聞いてみると、パスポートに10,000キープを挟んで窓口から中へ出 ![]() ほぼ全員の処理が終わると、窓口から出され、どかっと積み上げられた。急いで自分の赤いのを探す。 そして次の場所へ向かって歩き出した人達を追って行く。しばらくするとベトナム側のイミグレーションが見えた。少し手前でオリーブ色の制服を着た係官が時々チェックしているようだ。何をチェックするのか、前を歩く白人二人が止められ、続いて私も止められた。ニヤニヤしていてチョッとだらしない。小さなポリスボックスのような所へ連れて行き、耳の後ろへ器具を向けた。体温測定だっ ![]() イミグレーションの前はすでに人だかりができていた。そしてここでもパスポートにお金を挟んで提出している。バスのメンバーに、「ここはいくら?」と聞いたら、「10,000ドンだ」、と教えてくれた。でも私はドンなど全く持っていなかった。そこで「USドルかキープではダメか?」と聞いてみると「ダメだ、誰かそこらの人に両替してもらえ」、と言う。すぐ近くの人に頼むと無いと言われた。すると向こうにいるおばさんが換えてあげると言ってくれた。レートがいくらかも知らないし、どうでもよかった。急いで10,000ドンを挟み、窓口からそっと手を伸ばしパスポートの山に載せた。 ラオスもベトナムも、まとめてスタンプを押す。顔のチェックなど全くない。だから何冊もの束を出している人も見かけた。お金の事を聞くと、チップだと言った。係官に対するチップはないだろうから国税なのだろう。 ここでは、ある程度スタンプが押せると、自分のをさがして取っていく。私の赤色パスポートを見ていると、スリットにかけ何度もスキャンを繰り返している。どうもうまくいかないようだ。ICのパスポートでもこんな磁気スキャンはできるのだろうか。係官は首をかしげ、それでも最後のページに何やら書きながらスタンプを押してくれた。 やれやれ、やっと国境が越えられた。ベトナム社会主義共和国に入国だ。それにしても長かった。ラオス側を6時前からベトナム7時半まで1時間半もかかった事になる。 ぞろぞろと歩いて行くのを追っかける。薄っすらと草が生えた広場があり、赤いバスと私の乗るトラックのよう ![]() 背丈程もあるようなバナナの枝が置かれていた。回りにぎっしり緑色のバナナの房が付いている。そしてそんなバナナを担いで歩く人を何人か見かけた。近くでは、牛が首に吊った鈴をカランカラン鳴らしながら歩いている。何頭もが放し飼いにされているようだ。カバンを持った両替商のおばさんが次々とやって来ては「両替しないか?」と言う。その度に断った。両替はフエでしようと思っているからだ。 高い山に密林それに深い谷底。 周囲を山脈に囲まれたこの国境の町ラオバオもかなり高い位置にありそうだ。空が幾分明るくなってきたが、天気は良くない。どんよりと曇っている。 皆が揃ってバスが出発した。ベトナム側の道路は良さそうだ。さすがに穴ぼこなどは全くない。この通りには商店がいっぱい建ち並んでいて、ちょっとした繁華街になっている。バスが止まり、乗務員がノートを持って出て行った。どうも荷物をチェックするようだ。 カーブが多く長い下り坂が続く。バスは天井の荷物を気にしながらゆっくりと進む。深い山の中から平地への道程は遠い。いくら走っても辺りは山ばかりだ。またDVDのベトナム歌謡が始まった。昨夜と同じ歌が流れてくる。 所々に山岳民族らしき高床の家や集落が見える。そしてこんな山奥の道路を民族衣装で歩く人も見かけた。若しこの道がなければ彼らの生活はどうだったのだろう。 2.危うくフエを通過されそうになる 川が近くに見えるようになり、やっと平地に近ずいたようだ。この頃から雨が降り出した。嫌な予感がする、まだ宿が決まっていないのだ。 雨の中での街歩きは大変だ。 道が平坦になってしばらく走った所で、前の乗務員に切符を見せて「フエまでなので」、と確認した。するとその人は分かったと言った。大型トラックが行き交う幹線の国道1号線に出た。そして『ドンハー入り口』、の道路案内板を見た。これから先はうかうかしていられない。車の通行量が多くなった。ベトナムは車種によって何通りもの制限速度がある。これだけ天井に山盛りした荷物があるのに、バスの意地なのか何台ものトラックを追い抜いて行く。時折、前の対向車からパッシングライトが点滅する。道路は片側1車線ながら車道の外も広くなっ ![]() またしても道端の警察官が手を挙げた。バスは停まって、乗務員がノートを持って急いで走る。何度も繰り返された行動だ。積載物の通行税なのか、単なるチェックなのか、よく分からないが、警官は所々に立っていて手を挙げるのだ。荷物を直接調べるようではないが、ノートに書かれた積載物や乗客でもチェックしているのだろう。 三差路の道、左がフエ、右が本線のダナン方面だ。そんな案内板 ![]() 運転手がキョロキョロしながら道をさがし始めた。そして大きくハンドルを切って、田んぼの中の狭いあぜ道のような所へ入った。バスがぎりぎりで通れる道だ。 隣の男の子とはずっと話してなかったのに、急に話しかけてきて、フエへ行く事や道路の事を話しだした。しばらく行った所の交差点で、たくさんの荷物と一緒に女性が降りた。 そしてそこから更に何分か走った所でバスが停まり、「ここで降りるよう」、乗務員の一人が私に言った。 何とも雑に降ろされた。ここは一体どこなんだろう。雨が降っていた。右側には列車の線路が走っている。目印はこれしかない。 市街地に近づいている事は確かだが、今どの辺りにいるのか全く見当がつかない。しばらく線路沿いを歩いていたが、トラックが多く危険なので、左側の歩道へ移る。とにかく前へ歩いて何かの目印となる物を見つけなくては。それにしてもこの雨は厄介だ。 3.雨のフエで親切な人に出会う 急に車道の方から一台のバイクが歩道に乗り上げてきた。すっぽり雨合羽を被った人が家の前へバイクを押して行く。私はすかさず声をかけた。ここがどの辺りなのか聞かなくてはいけない。 大学生らしきその女性は、水の滴る合羽の頭を外し、この旅行者を見た。地図はリュックの中なのですぐには出せず、取りあえずこの場所を聞いた。 すると王宮の外堀の近くのようで、「あの角を左に行って、右側の橋を渡ると新市街へ出られる」、と詳しく説明してくれた。フエ駅もたずねると、この線路の先にある鉄橋を渡ったらすぐだと言った。 お礼を言ってまた歩き出した。頭の中で地図が組み立てられた。もう急いで歩く必要もない。リュックから雨傘を取り出した。歩道をぶらぶら歩くのだが、デコボコが激しく水溜りも多い。何ともリュックが引きずらいのだ。 し ![]() ただこの大きなリュックがあるし雨も降っている、事故でも起こしたら大変だ。何度も「大丈夫だから」、と言ってくれたが、親切な心に感謝しながら、お断りした。バイクは雨の道を反対方向へ帰 ![]() しばらくして、この大通りを直角に曲がると観光地らしく歩道もきれいになった。今度は右側の歩道へ渡り歩いていると、一台のシクロが止まった。おじさんが近づいてきて、しきりに乗るよう勧める。お金持ってないからと言うのだが、そんな事は聞かない。何度も乗るようにと言った。こんな所にいる旅行者がお金を持っていない筈がない。そう思っているのだろうが、私は本当に小銭しかないのだ。まさかこんな展開になるとは思わず国境で両替しなかった。 おじさんを振り切って歩くのだが、おじさんとてそう簡単には諦めない。シクロを押しながら同じ速さでついてくる。そしてまた大声で勧めるのだ。何とも執っこいと感じながら、でも商売はこの位熱心じゃないとダメだとも思った。 徐々に古都の風情を感じるようになってきた。左側の奥の方に城壁が見えてきたのだ。 4.ネットカフェに入り宿探し フォーン川に架かる大きな橋さえ渡れば、店がいっぱい並んだ通りに出ると思っていた。そこには両替所もあり食堂やらカフェが軒を連ねているようにも思っていた。しかし、かなりと言うか全く違っていた。店などどこにも見えない。整然とした通りに雨合羽のバイクがたくさん走っているだけだった。 ![]() もっと先だろうと期待し更に歩く。ハノイ通りをずっと歩いて行くと、少しずつ街 ![]() ここでラオス・キープを全部と1万円を両替した。宿はネット上での決済だから現金は必要なかった。 次はネットカフェだ。シクロのおじさんは店の前で心配そうに眺めていた。ネットカフェを案内して欲しいと言うと、シクロに乗ったら連れて行くと言う。両替もお世話になったし、お金もできたし、と思い値段交渉をした。シクロに乗ると前面にすっぽりと雨避けのビニールを取り付けた。目の部分が透明になっているだけで視界は良くない。動きだしてほんの数分だった。テーブルにPCがいっぱい並んだネットカフェに着いた。席に着くが、日本語入力はダメだった。ホテル予約サイトを開く。ところがこのような店独特だが、キーボードの文字が殆ど消えていて読めないのだ。アドレスなどはいいがパスワードの入力に困る。 それでも何とか開く事ができ、安いホテルをさがした。そしてこのすぐ近くの宿を見つけ発注する。ところがここも1泊しか予約ができなかった。今晩の分だけでもあればいいか、後は宿に行って検索しよう。店員にバウチャーのプリントをたのんだ。 5.やっとフエの宿にチェックイン 交差点まで歩いた所で、モータサイのおじさんがいたので、ホテルの場所を聞いてみた。シン・カフェが右の方に見えた。そのちょうど反対側を少し行って左の路地だと教えてくれる。 確かにそこには路地があり、安ホテル街の雰囲気が漂っていた。すぐ見つかった。やっと雨から解放されるのが嬉しい。フロントでバウチャ ![]() ![]() フロントまで降りて行って、お昼ご飯はどこで食べたらいか聞いてみると、すぐ前のカフェを勧めた。親戚なのか仲良しなのか、やたら前が良いと言う。 前の店へ行って、野菜たっぷりの炒飯を食べた。味はまあまあで、値段は安く、100円程だ。この店を出て辺りをぶらついてみた。この辺り一帯は一番の繁華街なのか、いろんな店が並んでいた。両替前と比べるとかなり余裕のある見方ができる。 少し歩いただけですぐ宿に帰った。今日はあの雨の中を歩き疲れたし、夜もあまり眠っていない。 部屋に戻りベッドでしばらく眠った。目が覚めたのは20時過ぎだった。 頭がすっきりしない。フロントで「夕食はどっか?」、と聞くと、やっぱり「すぐ前の店で」、と言う。今度はそのお勧めを無視して通りへ出た。レストランが何軒か並んでいた。どの店も開けっ放しで、外にもテーブルがはみ出している。 ![]() 角から2軒目の店に入った。そして『セットメニュー1』、を注文した。エビの天ぷ ![]() この後すぐホテルへ戻った。フロントにPCを持って行きネットを繋げてみた。すると難なく繋がった。ここにもPCは2台置かれているのだが、やはり自分のが安全だ。 そして、このホテルを再度検索すると予約ができたのだ。良かった、これで明日は荷物移動しなくて済む。すぐこのバウチャーの画面をフロントのおじさんに見せた。 その後、このフロアのテーブルで、ダナンの宿2泊分の予約も済ませた。 Topへ 前へ ◀ ▶ 次へ |
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